「協賛」と「寄付」、似て非なる2つの貢献
March 5, 2019
協賛と寄付
会社の経営とともに、さまざまな団体にかかわっていると、自然と協賛や寄付の話が舞い込んできます。わたしもその例に漏れず、経営者や個人と立場はいろいろですが、以下のような活動にかかわっています。
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東大には年に2回、大きな学園祭があります。その季節になると、実行委員会から「ご協賛のお願い」が郵送されてきます。いつからそうしているのか忘れたけど、いつも少額ですが寄付しています。そうすると、学園祭プログラムの後ろのほうに、名刺大でわたしの名前が載ります。
2014年から関東大学女子サッカー連盟の理事を引き受けています。そうすると、連盟に所属する学生がアークコミュニケーションズに来訪し、「協賛」をお願いされることがあります。協賛すると、リーグのプログラムの後ろに、小さく会社の「広告」を出してくれます。
「メイク・ア・ウィッシュ」という難病の子供たちの夢をかなえる団体があります。独身時代は子供に全く興味がありませんでしたが、当時からその活動に敬意を表して、少額の「寄付」を続けています。
東大女子卒業生の会である「さつき会」が7年前に作った、地方女子学生を対象とした奨学金制度「さつき会奨学金」の委員長を務めています。ここでは、「寄付」を集める側でもあり、自分自身が「寄付」をする側でもあります。
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さて、「協賛」と「寄付」は何が違うのでしょうか?
Sponsorshipとdonation
協賛:見返りを求めるもの。対価があるもの。つまりビジネス。広告効果や広報効果を期待されていることが多い
寄付:見返りを求めないもの。つまり善意。しかし、感謝の気持ちや寄付者の期待に応える行為など、金銭に変換不可能な見返りは求めている
英語でも日本語と同様に、「sponsorship」(協賛)と「donation」(寄付)という使い分けがされています。どちらも語源はラテン語で、「to sponsor」は「spondere」が語源で、「約束する」「誓う」という意味。「to donate」は「donare」が語源で、「あげる」「与える」という意味です。「協賛」とは、わたす金銭に対して見返りがあることを「約束する」こと(契約に近い)で、「寄付」とは、良い結果を期待して金銭を「あげる」ことです。
「協賛する人」が「sponsor」で、「寄付する人」は「donor」と呼ばれます。さらに多くの寄付をする人は「philanthropist」(博愛主義者)と称されることもあります。
寄付で与え、協賛で受けとる
では、学園祭のプログラムに名刺大の名前が刷られたことで、わたしにとってそれが協賛金相当の見返りになっているのか、と問われれば、それは否。あくまで、母校への愛や学生への支援という、実質、「寄付」の気持ちでお金を払っています。
でも、これは実行委員会にとって「寄付」ではなく「協賛」であってほしい。なぜなら、若者たちが、感謝の気持ちを表明するだけで、自分たちの遊びのために他人からお金をもらってはいけないと思っているから。
大学生はこれから社会に出ていきます。多くの人は社会で、報酬をもらう対価として何かをします。なので、大学時代に目標収集金額を立てた上で、対価が必要な「協賛」というものを獲得するために努力することは、教育上も望ましいのではないでしょうか。
そして、いつの日か、わたしにとって協賛金相当の見返りがあったと本当に思わせてくれる広報・広告効果が出てくる可能性もゼロではありません。
学生には、「いだたいたものにはそれ相応のお返しをする」ということを常に考えてほしいと思っています。
税法上、企業は協賛金の方が有利
協賛と寄付は税務上も違ってきます。
企業の側から見ると、協賛はその目的によっても異なりますが「100%損金」にできる場合があります。寄付は、寄付控除対象ならば何らかの税控除はあります。よって、一般的に言って、企業の観点からは協賛のほうが税務上望ましいということになります。
一方、個人から見ると、協賛は税控除ゼロ。寄付控除対象ならば何らかの税控除はありますが、そのハードルは高くなります(さつき会奨学金には寄付控除がありますが、メイク・ア・ウィッシュには当初寄付控除がありませんでした)。
こうしたことは、協賛金や寄付金を集める立場の人たちにも、ぜひ知っていてほしい内容です。
お礼を言う寄付者
昔は協賛や寄付を出すだけの立場でしたが、最近は集める立場になることも多くなりました。特にスポーツ関係の支援をいただく時に、寄付であるべきなのか協賛であるべきなのかを考慮し、どのように支援者にお返しができるかいつも考えています。マイナースポーツやマイナーイベントでは、正直、広告効果は得にくい。だから、協賛をいただく時は、広告以外の効果を提供する工夫をしています。
協賛と寄付の違いを説明する際、「受ける側には、寄付者に感謝の気持ちをもってもらいたい」と書きましたが、実際には寄付者がそれを求めることは多くありません。むしろ、寄付者のほうが受け取る側に感謝の気持ちを抱いていることが多いくらいです。
寄付金を集める側になって、お礼を言いに行くと、逆にお礼を言われることもあります。「こんな素晴らしい取り組みをしてくださって、わたしが感謝しているくらいです」と寄付者に言われたこともあります。だからこそ、寄付者に対する感謝の気持ちは絶対に忘れてはいけないし、何らかのかたちでお返しをしなければいけないと思っています。
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