コルシカ島「初めての日本人」|翻訳者派遣会社が送るエッセイ 未知しるべ

翻訳者派遣会社が送る、世界を旅するヤマ・ヨコのエッセイ

コルシカ島「初めての日本人」

未知を求めて世界を旅するヤマ・ヨコのエッセイ。今回は、コルシカ島(フランス)で遭遇したフランスW杯で沸く夜と、小さな村でのささやかな"寄り合い"交流の夜をお届けします。

今年(2018年)、サッカーW杯でフランスが2度目の優勝を果たした。

20年前の優勝時の代表主将であったデシャン監督のもとでの優勝とあって、大きな話題を呼んだ。

実はこの20年前、1998年のフランスチームが優勝する瞬間を、私はコルシカ島で目撃した。小さなバーの片隅で1人。テレビの画面は遠く、興奮して立つ人もいて、ほとんど見えない。それでも試合の行方を知るには十分だった。人々の歓声や嘆き、体全体から発する空気が、何より雄弁に試合の行方を物語っていたから。

そして、優勝の瞬間!人々の歓声と爆裂音が耳をつんざく。ありとあらゆる窓が開け放たれ、あっという間に通りは、投げ込まれた爆竹だらけに。鳴り止まぬ爆竹の煙をかき分けるように、赤いオープンカーがクラクションと指笛を盛大に鳴らしながら繰り出す。

試合終了の余韻も何もあったものではない。宿はほんの10メートルほどの距離だったが、爆竹の雨あられと降り注ぐ通りに出るのもはばかれる。いつまで続くとも知れぬ狂騒の夜を、しばし見物することにした。

翌日の新聞の見出しが、また揮っていた。バスで新聞を読む老夫婦に遭遇。一面はもちろんサッカーだ。じっと見ていると、「読むか?」とお父さん。「ほら」と差し出された一面には、ジダン選手の大きな写真と見出しの文字(もちろんフランス語)。得意気になるのを抑えるように、ことさらにいかめしく文字を指でなぞりながら、不慣れな英語を一語、一語、発する。"Glory, God create Zidane"

日本語に訳すと「栄光あれ!神よ、よくぞジダンを創り給うた!」という感じか?日本ではまずスポーツ紙で、いやそうでなくても、お目にかからない見出しだ。「人間は神が創りしもの」の意識が染み込んでいるんだなあ。こんなふうに、createを使うのか!と妙に感心してしまった。

またある日、バスで通りかかった小さな村。バス道から迫り上るような崖に家々が張り付くように建つ、コルシカの典型的な、そして美しい山村の佇まいに魅せられて、思わず下車した。次のバスは何時間後か、あるいはもうないのか、それすらわからない。たまたま立ち寄ったこの村に泊まるのも悪くないが、果たしてホテルはあるのか。

ガイドブックをめくるも、出てくる文例は「ホテルはどこですか?」というもの。その一段階前の「この村にホテルはありますか?」が欲しいなあと、ひとりごちる。仕方なく、見つけた村人に"ホテルがある態"で聞いてみる。幸運にもホテルが村にあるらしい。親切にもホテルまで案内してくれ、宿の人を探しに行ってくれた。どうやら他に泊まり客はいないらしい。宿の人はフランス語しか話せず、今ひとつわからない。他にホテルがないか聞いてみると、「ある」と言う。もう1軒のほうに行ってみると、1階がバーで上階を宿にしているようだ。主人はフランス語しか話せないが、「娘は学校に行っていて英語が話せる」と、どうやら言っているようだ。娘が帰ってくることを期待して、投宿を決めた。

夕刻になり、1階のバーに降りて行くと、ぱらぱらといるお客さんの間を行き来する高校生くらいの娘の姿が。しばらくすると、恥ずかしそうに寄ってきて「どこから来たの、って皆が...」と英語で話しかけてきた。しばらく彼女が他のお客さんと私のテーブルを行き来する形で会話が続いた後、テーブルをつないで一つの島になった。彼女も座って、学校で折り紙をした話などをしている。「仕事は何時までなんだ?」「朝9時から夜9時くらいかな」「クレージー...」首を振りながらつぶやくおじさん。「あそこには昔、スタジアムがあってな...」と、昔語りを始めるおじさん。なんだか村の寄り合いに加えてもらったような気分だ。

「日本人はたまに来たりする?」と娘に聞いてみると、"Non, You are premier Japonais."とフランス語まじりの英語で答えられた。ついに「プルミエール・ジャポネーゼ(初めての日本人)」になったわけだ。そりゃ、皆さん興味津々なわけねと、納得。現地の人と交流を図りたければ、日本人がまだ珍しい地域に行くのがオススメ、かもしれない。初めて会う日本人が私でよかったのか、という気がしなくもないが、これまた思い出に残る一夜になった。

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