翻訳会社の窓口となるのはプロジェクトマネージャー(翻訳コーディネーター、営業)と呼ばれる人たちで、実際に彼らが翻訳をするわけではない、ということをまずご認識ください。
翻訳の品質を決める重大要素の一つは、そのプロジェクトに合った翻訳者をアサインすることです。プロジェクトマネージャーは何百人もの翻訳者の得意分野や特性をよく知っています。ですから、まずはプロジェクトマネージャーが翻訳者のアサインにおいて、適切な判断を下せるよう、皆さんが十分な情報を伝えることが大切です。
私たち翻訳会社が欲しい情報は、主に以下の 4 つです。(それ以外に有用な情報については、後ほどお教えします。)
- ドキュメントの内容
- 対象読者
- ドキュメントの使用目的
- 期待している仕上がりのイメージ
ドキュメントの内容を大まかに伝える
医薬分野が得意な翻訳者にIT分野の翻訳をお願いするほどプロジェクトマネージャーは愚かではありません。しかし、
「通信と言っても、移動通信分野です」
「業務パッケージのインストールマニュアルですが、ネットワークのことが中心です」
などと、もう一歩、内容に踏み込んだ情報を伝えると、大変効果的です。プロジェクトマネージャーが「どの分野に強い、またはどういう翻訳を経験したことのある翻訳者をアサインしたらよいか」を、判断するための材料を翻訳会社にたくさん与えてください。
読み手が誰か伝える
薬に関する翻訳も、お医者様相手か一般消費者相手かによって訳し方が違ってきます。専門家相手の翻訳が得意な人もいれば、初心者にわかりやすく説明することが得意な人もいます。対象が子供か大人かによっても違います。読み手が誰なのか、明確にプロジェクトマネージャーに伝えてください。
ドキュメントの使用目的を伝える
その使用目的によって、翻訳会社がアサインする翻訳者が違ってくる場合があります。同じIT系の翻訳でもプレスリリースではより文章表現が上手な翻訳者、マニュアルの場合は技術的に理解が深い翻訳者、そして印刷物でなく吹き込みとなると口語体に強い翻訳者を翻訳会社はそれぞれアサインします。ぜひ、翻訳物を使う目的をはっきりとお伝えください。
これらの情報は、予算や納期とのトレードオフを考える場合にも、プロジェクトマネージャーが判断する手助けになります。「予算が厳しいけど、この目的なら、もっと安い翻訳者を使っても大丈夫」「納期に余裕がないけれど、複数の人に訳させることはできないなぁ」などと。
納品物の仕上がりイメージを共有する
「えっ、そういうことを希望していたのですか!」と思わず言ってしまうほど、お客様と翻訳会社が思い描いていた翻訳物の仕上がりに差が出ることが残念ながらあります。事前に仕上がりのイメージをプロジェクトマネージャーや翻訳者と共有すると、仕上がりを見てびっくりということは起きません。
それでは、お客様と翻訳会社との間で、どのように仕上がりのイメージを共有すればいいのでしょう。一番確実なのが、翻訳会社にサンプルを示すことです。翻訳物がパンフレットなら、参考となる自社製品のパンフレットや、他社製品のパンフレットで自分がいいと思うものをみつけるとか。
サンプルがなければ、仕上がりイメージを口頭で伝えましょう。「読み手に語りかけるように、それでいて淡々と訳してください。プロジェクトXのイメージかな。」のように。