中華系、マレー系、インド系など、さまざまな民族が暮らす多民族国家シンガポールでは、国語のマレー語をはじめ、中国語、タミル語、英語などの多言語が飛び交っています。そんなシンガポールの共通語ともいえるのが「シングリッシュ」の通称で知られるシンガポール英語です。さまざまな人が適応しやすいように変化を遂げた、まさに"多民族仕様の英語"である「シングリッシュ」の特徴を紹介します。
慣れていないと聞き取りづらい「シングリッシュ」独特の発音
同じ英語でも、地域によってアクセントや発音が異なるのは自然なことです。アメリカ英語、イギリス英語、オーストラリア英語にそれぞれ違いがあるように、シングリッシュにも独特の発音があります。アメリカ英語やイギリス英語を聞き慣れていればいるほど、ときには聞き取りづらいのがシングリッシュです。しかし、シングリッシュ独特の発音パターンを知っていれば、聞き取れないときでもヒントになるでしょう。
語尾子音の発音が省略される
マレ-語や福建語、広東語などにみられる特徴で、具体的には、語尾の「p, t, k, b, d, g」などの子音が発音されずに飲み込まれます。
例) Ticket→チケ Car park→カッ・パ One hundred→ワッハー
[th]の発音
学校では、「前歯で舌を軽くかみながら発声する音」などと習う[th]の発音が、無声の時は[t] に、有声の時は[d]の音で発声されます。
例) Thing→ティング Think→ティンク Three→トゥリー They→デイ
単語が一語一語区切られ、リエゾンがない
シングリッシュには、単語と単語をつなげて発音するリエゾンがありません。一語一語がしっかりと区切って発音されます。慣れていないと英語ではなく中国語のように聞こえるかもしれません。
「シングリッシュ」の文法における特徴
中国語やマレー語の影響により、一般的に英語学習者が習得に苦労する文法が、簡略化されているのがシングリッシュの特徴です。
時制がない
過去形、未来形などによる動詞の変化がありません。時を表す副詞やほかの単語を一緒に使うことで時制が表されます。
例) I meet him yesterday.(昨日彼に会いました。正しくは「I met him yesterday.」) I have a meeting tomorrow morning.(明日の朝、会議があります。正しくは「I will have a meeting tomorrow morning.」)
名詞の複数形がない
名詞の複数形を作るのに「-s」をつければいいのか、「-es」にしなければいけないのか、などと頭を悩ませる必要がありません。
三人称の「-s」がない
例) She need three book. (彼女は本が3冊必要です。正しくは"She needs three books")
正しい英語を話そうとして英語がなかなか出てこない人にとっては、シングリッシュは気が楽です。文法を重視した日本式の英語学習よりも、実践的に英語を話すことにより、実際の言語感覚を身につけることができるので便利さを感じられるかもしれません。
これぞ「シングリッシュ」! 文末の「-lah」(ラ)
文末に「-lah」(ラ)をつけることにより、日本語でいう「~だよ」、「~ね」のようなニュアンスを表せるのは、シングリッシュの大きな特徴のひとつです。マレー語の影響、あるいは福建語の影響などといわれています。使い方は簡単です。
例) OK lah!(OKだよ!) Never mind lah.(気にしないでね)
「OK lah!」は頻繁に使われる、まさにシングリッシュの代表格です。また、語尾を上げて「No problem, lah?」とすると「問題ない?」と疑問文になります。簡単に使えるので、状況や相手との距離感に応じて活用してみましょう。
相手の英語の特徴を事前に把握しましょう
英語を介した国際ビジネスが多くなるにつれて、英語でのコミュニケーション能力がより一層求められています。英語力を磨くことも大切ですが、地域や文化圏に応じて、言語は変化するということも認識しておきましょう。これから接する相手が話す英語の特徴を、事前に把握することで、コミュニケーションがより円滑になります。
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