A社の海外営業部で営業事務を担当している竹田です。最近、翻訳文(日英)のチェックを上司から任され、四苦八苦している毎日です(苦笑)。学生時代に短期留学していた程度の英語力で、本格的なビジネス文書の翻訳チェックができるほど、世間は甘くありません。なので、そこは「餅は餅屋」。友人でプロの翻訳チェッカーの宮本くんに半ば強制的に協力を依頼して、「わたしにもできる英文翻訳のチェック」を実践中です。
前回、いよいよ本文の内容に踏み込んだチェックを始めました。ビジネス文書で絶対間違ってはいけない数字のチェックです。今回も同様に間違ってはいけない重要な部分、固有名詞のチェックについて、宮本くんに教えてもらいたいと思います。
宮本:さて、ここからはかなり内容に踏み込んだチェックになってくるから、慎重に、かつ大胆によろしくお願いしますよ!
竹田:ちょっと怖いです。優しく教えてくださいませ!
間違えてはいけない固有名詞
宮本:「固有名詞」って何のことだか分かるよね? 人の名前だったり、地名だったり、会社名だったり、部署名だったり......。
竹田:商品名もあるわね。いずれも、ビジネス文書には必ず出てくるし。
宮本:そうなんだ。そして、いずれも、前回の「数字」と同様、間違えてはいけないものばかり。例えばビジネス相手の名前を間違えたら大きな失礼になるし、会社名だって同じだよね。文書の信頼度という意味では、地名や商品名も間違えてはいけない代表格だし。
竹田:ビジネス文書じゃないけれど、友達とのメールなんかのやり取りでも、名前の間違えは気になるところですよね。間違えると、なんとなくお互いの関係がぎくしゃくしたりする時もあるから。
すべての固有名詞を確認
宮本:確かに。では、どうやってチェックするか。原則、すべての固有名詞は「原典にあたって」確認すること。「原典」と言ったって、個人の戸籍や会社の登記簿を見られるわけではないので、今はネットで調べよう。例えば会社の情報なら、その会社のホームページなど、一次情報提供元で確認すること。ディレクトリサイトやまとめサイトでは間違って引用されていることもあるからね。すべての固有名詞でこうした確認をしよう。
竹田:えー! 全部調べなくちゃいけないんですか?
宮本:そうだよ。面倒くさがらずに、すべての固有名詞を調べよう。今はインターネットでGoogleなどのグローバルに使える検索エンジンという強力で便利なツールがあるので、これを有効活用しよう。
竹田:分かりました......。それで、どういったところに注意すればいいんですか?
宮本:こんな感じ(下記)かな。もし翻訳時に作った「用語集」があれば、それも有効活用できるよ。
人名:翻訳前の原稿を確認(名前は英語で書かれているケースが多い)。役員クラスなら、会社のパンフレットやホームページにも掲載されている場合が多いから要チェックだ。日本人の名前を英文にする時は、しばしば漢字の読み間違いが発生するので、これも注意しておこう。さらに、役職名にも注意が必要だ。用語集があれば、それを活用するのがいい。怪しい時は手間がかかっても問い合わせるなどしよう
会社名:人名と同様、翻訳前の原稿を確認する。無ければ、会社のパンフレットやホームページを確認する。大文字・小文字、スペースの有無、法人の種類(Inc.、Ltd.、Corp.、Co.など)に注意が必要
部署名:用語集があれば活用する。翻訳前の原稿をよりどころにするが、社内の場合は必ず問い合わせる
製品名:こちらは公開されているケースが多いので、会社のパンフレットやホームページを中心に確認する。会社名と同様、大文字・小文字、スペースの有無などに気を付けよう
地名:おもに検索エンジンを使って一般的な情報を確認。表記が微妙に揺れているケースもあるので、できるだけ信用のおけるサイト(政府や大使館サイトなど)をソースにする
正確さが文書の品質を左右
竹田:うわぁ......、これは大変! でも、やりがいはありそうですね。
宮本:うん、そうなんだ。ある意味このチェック工程は、「かかる時間」という意味では「山場」と言っていいかもしれない。でも、非常に重要なチェックなので、ぜひ手抜きをせずに確認してほしいんだ。文書の品質を決める大切なチェックでもあるしね。できれば、1人だけでやるのではなく、もう1人お願いして、2重チェックした方が良い部分でもある。
竹田:分かりました! 目を皿のようにして確認します! あとヒマそうにしている関口くんも捕まえてお手伝いしてもらいます!