A社の海外営業部で営業事務を担当している竹田です。
先日、翻訳会社に日本語書類の英訳を依頼したことから、その翻訳文のチェックまで任されてしまいました。多少は英語が分かるつもりですが、本格的な英文チェックは初めての経験です。そこで、友人でプロの翻訳チェッカーの宮本くんに教えてもらって、「わたしにもできる英文翻訳のチェック」を実践中です。
前回は、英文チェックの基本中の基本である「文章の抜け漏れ」について、簡単で効果的なチェック方法を教わりました。今回はもう少し文章の内容に踏み込んで、ビジネス文書で「絶対間違ってはいけない」部分のチェックに挑戦してみます。
宮本:今回は、ある程度、文章の内容に踏み込んだチェックに挑戦してみたいんだ。優秀な竹田さんなら、前回に引き続き、ササッとできるようになると思うよ。
竹田:宮本くん、おだてても何も出ないわよ(笑)。それで、今回は何のチェックなんですか?
絶対に間違ってはいけない「数字」
宮本:今回は、ビジネス文書でもっとも間違ってはいけない「数字」のチェックなんだ。
竹田:へえ、数字ってそんなに大切なんですか?
宮本:もちろん! 例えば、予算の金額を1桁間違ったら大変なことになるよね。日にちだってそうだ。1年違えば話はだいぶ変わってくる。社外に出す文書はもちろんのこと、社内文書だって数字の間違いは大きな事故に通じかねないので、ビジネス文書では絶対に間違ってはいけないポイントなんだ。
竹田:確かに......。では、どうチェックすればいいの?
数字だけをひたすら突き合わせる
宮本:ハッキリ言って、このチェックに近道はない。残念ながら、地道にやるしかないんだよ。ただ、次のようなことを意識することによって、チェックのスピードと正確さを高めることができる。やることは単純。数字だけに着目して、原文の日本文と翻訳後の英文を突き合わせてチェックする方法だ。文章の始まりから数字をすべて見つけ出し、翻訳文と一つひとつ見比べて間違いがないかを調べる。この時、数字の打ち間違いだけではなく、桁のチェックもしよう。
竹田:日本文と英文で表記方法が異なっている場合はチェックが大変そうですね......。
宮本:そうなんだ。両者とも算用数字(1、2、3、......)で書かれていれば比較は簡単なんだけど、例えば日本文が漢数字で表記されていたり、英文が英単語(hundred、thousand、million、billion、......)で表記されていたりすると、比べるのがとたんに難しくなるよね。日本人ならば、漢数字と算用数字の対照はあまり苦にならないけど、英単語による桁表記は、慣れるまで対照表みたいなものを用意しておいた方がいいかもね。
1,000 ⇔ 1千 ⇔ thousand
1,000,000 ⇔ 100万 ⇔ million
1,000,000,000 ⇔ 10億 ⇔ billion
1,000,000,000,000 ⇔ 1兆 ⇔ trillion
竹田:面倒くさがらずに、手元に小さなメモを用意しておけばいいってことですね!
宮本:ちなみに、同じ「billion」と「trillion」でも米英で桁数が違っていたんだ。20世紀後半までは、イギリスでは1 billion = 1兆(1,000,000,000,000)、1 trillion = 100京(1,000,000,000,000,000,000)と違う桁数だった。ところが現在ではほぼすべてのイギリス人が米国流の桁数を採用している。
竹田:うわぁ、ややこしくなるから、聞かなかったことにしておきますね(笑)。
赤点で比較済みの数字にマーク
宮本:そうそう。あと、もし翻訳後の文書に書き込みができるようであれば、チェックした数字の上でも下でもいいから赤点を1個打っておくと、チェック済みかどうか分かりやすいのでやってみるといいよ。これは、前回のピリオドを使ったチェックにも有効な、いわゆる「突き合わせ校正」で比較的知られた方法なんだ。
竹田:へえ、宮本くんに話を聞くと勉強になるわね! 次に教えてくれることも楽しみになってきた。
宮本:そう言ってくれるとやりがいがあるなあ。次はもっと文章の内容に立ち入った本質的なチェックをやってみるから、心の準備をよろしくね!
竹田:はーい!