わたし、A社の海外営業部で営業事務を担当している竹田と言います。仕事柄、英文の書類を扱うことが多く、今回も日本語書類を英訳するための良い翻訳者を探していました。隣の課にいる同期の友人から紹介してもらってようやく良い翻訳会社を見つけ出し、早速、日本語原稿を翻訳してもらい、さて内容をチェックする段に...。
ところで、この翻訳原稿、いったい誰がチェックするんですか???
上司におずおず聞いたところ、「竹田さんしか!」って、ニコニコ顔で言われました(泣)。多少は予想していましたが...。一応、海外に短期留学していたので多少英語は分かるつもりでも、英文チェックなんてとうていできるとは思えません。でも仕方ない、上司からの指示ですから。
あっ! そういえば、親しい友人に翻訳会社に勤めるプロのチェッカーさんがいるんだった! こういう時に頼ってこその友人だよね。
竹田:宮本くん、わたしにもできる英文翻訳のチェックの仕方を教えてくれないかな?
宮本:え? 本当かい? とうとう竹田さんも翻訳関係のお仕事か!
竹田:いや、そんな大したことはできそうにないのよ。わたしみたいに英語に自信のない人間でも、プロの翻訳者の訳した英文を簡単に、それも確実にチェックする方法があったら教えてくれないかなって......。
宮本:なかなか贅沢なお願いだね(笑)。専門のチェッカーにはかなわないけど、確かに早くて簡単で確実な方法があることはあるんだ...。それでよろしければお教えするけど。
竹田:本当!? ありがとう! 助かります!
日本文の句点と英文のピリオドを活用
宮本:さて、早速、最初のレクチャーだけど、これは極端な話、英語がまったく読めなくてもできるチェックなんだ。
竹田:え? 英文チェックなのに、英語が読めなくてもできるの?
宮本:うん、そう。これから教えることは、極力、個人の英語スキルに頼らずに正確なチェックができる方法なんだ。そういう意味では、初回はまったく英語が読めなくてもOKという方法を教えるよ。
竹田:なんかすごく敷居が下がった気がする! お願いします!
宮本:それができるのは、文章の抜け・漏れのチェックなんだ。英文そのものをチェックする前に、まずは翻訳文に原文から抜け落ちた部分が無いかをチェックする。これ、実は重要なんだ。
竹田:確かに。それで、どうやってチェックすればいいの?
宮本:これが意外と簡単なんだ。原文(日本語)と翻訳文(英語)の両方をプリントアウトして、2つを見比べながら、句点(「。」)とピリオド(「.」)を文章の頭から突き合わせてチェックしていくんだ。原則、原文と翻訳文の文章数は一緒のはずだから、これらの数は一致するはず。違った場合に「あれ?」と思って見直してみればいい。非常に機械的な比較で済む、誰でもできる簡単な方法なんだよ。
少しでも内容が分かると確度が上がり応用も効く
竹田:それは簡単! でも、わたしは多少内容も分かるから、文章の同一性も併せてチェックして行けば、かなり確実になるよね。
宮本:うん。最初は「まったく英語が読めなくてもOK」と言ったけど、多少は読めた方が確実性は高まる。特に、翻訳後にDTP(Desktop Publishing)でレイアウト配置までされている場合、段落ごとに翻訳していると、場所が入れ替わっちゃったりする場合もあるので、ある程度内容が読めると、そうしたところまできちんとチェックできるよね。
竹田:文章というよりも、文章中に出てくる自分が分かる単語を目安にするだけで、抜け漏れや場所の違いはかなり正確に判断がつくよね。
宮本:うん、そうだね。はい、初回はこれだけ。
竹田:え? これだけ? 簡単すぎない?
宮本:いや、これだけでもチェックとしての効果は大きいんだ。無さそうで意外とあるのがこうした抜け漏れのミス。ここを見つけるだけでも大きな進歩というものだよ。次回も、やはり英語が分からなくてもできるチェック方法を教えるね。
竹田:楽しみ! よろしくお願いしますね、先生!
宮本:こういうときだけ「先生」なんだね(汗)。まあいいけど(笑)。