上手に断るビジネスノウハウ
May 26, 2020
ハイコンテクスト文化で断ることの難しさ
わたしは「できるだけ何でもやりたい派」なので、人から頼まれたことを断りたくない性格です。しかし、それでは、先に進めなくなることもあります。そこで今日は、「一緒の船」に乗りながらも、上手に断るビジネスノウハウをお教えします。
英語で話すときに困ってしまうのは、英語力の問題ではなく、ハイコンテクスト(言葉よりも文脈や背景、言外の意味を重視する姿勢)やローコンテクスト(言葉そのものの意味を重視する姿勢)のような文化への適応度の問題であることはよくあることです。
「察する」文化、あいまいな物言いをよしとする文化をもつ日本人からすると、「断る」ことはなかなか大変なことです。「それは難しいですね」と婉曲に断ったつもりでも、相手によっては、「難しいなら、解決するまで時間がかかるのだろう」と、こちらの意図と違うように思わせてしまったりします。
それでは、ローコンテクスト文化の人々には、単に「No」と言って断るのが良いのでしょうか? 必ずしもそんなことはありません。しかし、言葉でロジカルに断ることに長けていることは事実です。
できないことではなくできることにフォーカス
一般の方にビジネス英語会話の教材を紹介するとき、会話を教えるというより、「言葉を尽くして断る」というような「姿勢」を教えることが大切だと気付かされることがよくあります。そして、それは「ビジネスノウハウ」でもあります。すなわち、「No, I can't」ではなく、「I'd like to help, but......」という話し手の姿勢や代替案の提示などです。
例えば、お客さまから急にお願いをされた時、多くの担当者は「できることなら願いをかなえてさしあげよう」と考えることでしょう。なかには、「ちょっと残業して頑張ろう」とまで思ってくれる場合もあります。でも、残念ながら、それが難しいこともあります。
そういう時は、お客さまと「一緒の船」に乗って、お客さまのゴールを目指し、自分が「できること」は何かを考えてほしいと思います。できないことではなく、できることにフォーカスするのが大事です。
・「納期を〇月〇日にしていただければできます」
・「いま手掛けている△△△の優先順位を下げてよいのならできます」
・「◇◇◇の追加料金をいただけたら可能です」
・「〇〇〇(作業量を減らす提案)でよければできます」
弊社が手掛けていないサービスの時は、
・「〇〇会社さんならできると思います」
と紹介します。
上司との関係でも「一緒の船」は同じ
それでは、上司に対してはどうでしょうか?
これも、お客さまと同じです。しかし、お客さまより上司のほうが、ハイコンテクスト文化です。上下関係があるので、断りづらかったりしますよね。そういう時にこそ、「一緒の船」に乗ってほしいと思います。
「一緒の船に乗る」という意味は、必ずしも相手のために、自分がずっとオールをこぎ続けることではありません。上司と一緒にどこの目的地に行きたいのかを共有して、船が効率よく進む方向を考えることです。自分ができたらそれが一番だけど、そうでないときに、どうやったら船が進むのか考えてほしいのです。つまり、代替案を考えることですね。
これは、お客さまにしようとしていることとまったく一緒です。「When you say no to your boss, try coming up with an alternative solution.」なんて書かれている教科書もありました。一方で仕事を依頼する上司は、代替案を受け付けるマインドセットが必要ですね。
直訳だとネガティブな意味に
わたしはこの「一緒の船に乗る」という表現が好きで、アークコミュニケーションズの基本理念の「Value」のなかでも、「私たちは、お客様と同じ船に乗り、ゴールを目指して仕事をします」というように使っています。
外国人の社員に言われて面白いと思ったのは、これを英語で直訳すると、「we're in the same boat」となり、かえってネガティブな表現になるということです。「We're in the same boat」とは、「同じ不快・困難な状況にいる」という意味を示唆するからだそうです。「we're in the same boat: it's sinking」(沈没しつつある同じ船に乗っている)というニュアンスから発しているようです。
では、わたしが言う「同じ船に乗る」という意味は英語でどう伝えるべきでしょうか。それには、「To approach projects from our customers' point of view」や「To take our customers' point of view」、「To see a situation through our customers' standpoint」のような言葉を使って、「お客さま視点で見る」、「お客様の立場に立って考える」ニュアンスを出すのが良さそうです。
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