人は論理では動かない、感情で動くもの
August 7, 2019
論理は非論理に勝てない?
「議論に勝って勝負に負ける」のはよくあることです。わたしも、議論で相手をやりこめ、そもそもの目的(相手に変わってもらうこと)の達成に失敗してしまう経験が何度もあります。
逆の経験もあります。わたしに分がないとわかりながらも、相手に理路整然と説き伏され、なんだか癪に触って素直になれなかったり......。コンサルタントの知人が論理的に説明すればするほど、妻から「わたしはあなたの部下じゃないんだから、そんなことでわたしがあなたの言うことを聞くと思ったら大間違いよ!」と言われた話を聞いても、「そうだよなぁ、彼が悪いよ」と思ってしまいました。
だから、『「わたしと仕事、どっちが大事?」はなぜ間違いか』(谷原 誠著、2017年4月、あさ出版)という本を手に取ったとき、「そんなの論理的に説明したって駄目に決まっているじゃない。相手は議論をしたいんじゃないんだから」と思っていました。
論理的な人と非論理的な人が議論すると、論理的な人が負ける。これは、ビジネススクールで習ったありがたい教訓であり、中国でそういう場面にあった時に実感したことでもあります。
そういうこともあって、わたしはあまり、議論における論理の重要性に重きを置いていなかったのです。
論理が感情を動かすこともある
ところが、この本を読んで発見したことは、「わたしは自分が思っているほど論理的ではない」ということでした(笑)(特に夫と話すときなど、論理的に話すつもりなどさらさらないし)。「論理的に話す」ということは、こういうことも網羅していなければならないのかと勉強になりました。
一番参考になったのは、「論点のすり替え」の項目でした。これがとっても上手な人と、ある会合で話をしたことがあるのですが、当然のようにわたしが負けました。ああ言えば、こう言う。わたしが相手の言い分を認めない限り、延々と論点をすり替えられて議論が終わらない。このような会話にどう対処したらよいのか、正直わかりませんでした。そして、こういう人とつきあってはいけないというのが、当時のわたしの結論だったのです。
この本では、「そもそも、対処しては(論点のすり替えにつきあっては)いけない」と書いてあります。つまり、この手の人は、自分に都合がよくなるまで論点をすり替え続けるのです。だから、論点をすり替えさせてはいけないのです。「そのことは問題ではない」と軌道修正というか、一刀両断しなければいけない。なるほど。
タイトルに書いたように、人は論理では動かない、感情で動くものです。しかし、論理的に話を進めることで、人の感情を動かすこともあると思います。
「logic」より人間的な「rationality」
「論理で動く」「感情で動く」を英語で表現すると、「to act logically / rationally」「to act emotionally」となります。「感情的に反応する」のは、「to respond emotionally」または「to have an emotional response (to something)」と言います。
「論理」は一般的に「logic」と英訳しますが、時によって「rationality」(合理性)という言葉も使われます。実はこの2つ、同義語扱いされることが多いのですが、正確に言うと、若干違います。「rational thought」と言えば、「人間の知恵と感覚」に基づく思考を示しますが、「logical thinking」は極端に言えば人間でなくても構わなくて、「論理やコンセプト」に基づく思考の意味になります。
一方で「感情的」は「emotional」ですが、対義語の意味合いで「illogical(非論理的)」や「irrational(非合理的)」という言葉が使われる時もあります。しかし、文脈によって単に対義語として使われない場合もあるので、あまりお勧めできません。なぜなら、感情的に反応したことが必ずしも「非論理的」「非合理的」とは言い切れない時もあるからです。
最後に、「わたしと仕事、どっちが大事?」というフレーズから、ふと「living to work or working to live」という英語特有の表現を思い出しました。Work-life balance(仕事と生活の調和)について悩む時、欧米では「Do you live to work or work to live?」と聞かれることがよくあるそうです。先のフレーズに引っ掛けて言えば、さしずめ「仕事と生活、どっちが大事?」というところでしょうか。
ところでみなさんは、「わたしと仕事、どっちが大事?」とパートナーから聞かれたら、何と答えますか?(「どちらも」は、ここではNGとします 笑)
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