社長が『上司をマネジメント』を読む理由
May 14, 2019
部下の立場を思い出し、よきfollowershipを発揮してもらう
創業のころ、『上司をマネジメント』(村山 昇著、アスカビジネス)という本を読みました。晴れて(?)上司がいない身分になったわたしが熱心に読んでいるので、友人に怪訝な顔をされたものです。この本は「よい組織は上司のよきleadershipと部下のよきfollowershipによって作られる」という、部下の立場の人のために書かれたアドバイス本だからです。
なぜ、この本を熱心に読んでいたかと考えると、理由は3つ挙げられそうです。
その1
Leadershipを学ぶには、部下の観点に立つことも有意義だと思ったから(殊勝な心がけ)
『ハーバード流リーダーシップ「入門」』(D・クイン・ミルズ、スコフィールド・素子著、ファーストプレス)を監訳して以来、リーダーシップについてことあるごとに考え、悩み、同じ本を飽きもせずに繰り返し読んでいます。上司がいない身分が長く続くと、かつて自分が不満に思っていたことをどんどん忘れていきます。部下の立場を思い出すことが、leadershipを磨くことにも通じると思ったからです。
その2
部下に組織の論理を学ばせようと思ったから(余計なお世話)
振り返ってみると、わたしは決して組織の中で動くことが上手ではありませんでした。「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」もうまくなかったし、自分がしたいことをするために、上司を有効利用しようなんて考え付きもしませんでした。しかし、わたしはいつも上司に恵まれていたので、さして困りませんでした。
それでも一応大企業に勤めていたので、「組織の論理」は学びました。アークコミュニケーションズを作った時は、悪い意味での「組織の論理」とは無縁の会社にしたいなぁと思ったのです。そもそも人数も少なかったから、「組織」というほどのものでもありませんでしたが。
ただ、部下を見ていると、大企業からの転職組と小企業からの転職組では、明らかに社内コミュニケーションのとり方に違いがあることがわかります。大企業であるクライアントが、当社のようにすぐさまいろいろなことを実行に移せないことを理解しづらいスタッフもいます。小さいと思っていた当社も、当時すでに社内には25人もおり、中間管理職を置いて組織化すべきフェーズになっていました。部下のためによい本がないかなぁと思っていたところ、この本に出会ったのです。
その3
部下が素晴らしいfollowershipを発揮することで、このままのわたしでよければ楽だなぁと思ったから(怠惰な心がけ)
う~ん、本音はここですかね(苦笑)。
部下に「いい本があるよ」とこの本を薦めた時は、何とも気恥ずかしかったものです。
上司はsuperior、部下はsubordinate
ちなみに、日本の学校や企業における上下関係は、世界の中でも珍しい風習に満ち溢れています。日本では当たり前の「先輩」や「後輩」というコンセプトは、欧米では一般的ではありません。ですから、どんな文脈でも使えるピッタリな英訳がなかなか見つからないのです。
ただし、企業内のフォーマルな関係になると、もちろん海外でも上下関係がありますから、ちゃんと呼び名が付いています。よく、「上司」は「boss」と英語に翻訳されることが多いのですが、そうすると事業部長も社長もみんな「boss」になってしまうので、誰を指すのか分からなくなります。なので、一番よい単語は「superior」または「supervisor」と言えそうです。
「上司が『superior』なら、部下は『inferior』?」と考えがちですが、人に対して「inferior」は「劣った人」や「下級者」という意味になるので、ほとんどの場合で非常に失礼な表現になってしまいます。正しくは、「subordinate」でしょう。
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