特別編:知ったかぶりのロシア語講座その1:私の名前は一つじゃない?
March 19, 2019
冬季ユニバーシアードのためにロシア語をにわか勉強
海外へ行くたびに、その国の言語をにわか勉強することにしています。翻訳会社の社長らしいでしょう?(笑)
アークコミュニケーションズスキーチームから恩田祐一選手がソチオリンピックに行ったときは、ロシア語を2カ月頑張りました。しかし、5年も経った今では、残念なことにほとんど覚えていません。このたび、スキーオリエンテーリングで全日本チャンピオンの石原湧樹選手が、冬季ユニバーシアードの日本代表に選ばれました。3月にロシア・クラスノヤルスクで開催される冬季ユニバーシアードに、わたしも帯同することになりました。
さあ、ロシア語の記憶を何とか呼び戻さねば......。
ロシア語の格変化にショック!
ロシア語の習得の難しさは有名です。「格変化が大変」とは聞いていましたが、まさかここまでとは......。
ロシア旅行を円滑にするのが目的なら、実用的なロシア語を10個覚えたほうがはるかに役に立つのですが、わたしは音韻論と文法マニアなのです。だから、意地で勉強を続けています。
そのわたしの意地を利用して、この「特別編」を読んだ皆さんが、「ねぇねぇ、ロシア語ってさぁ、○○なんて知ってた?」と言えるようなネタを提供したいと思います。ただし、ロシア語会話が特に上達するものではないと、先にお断りしておきますね(笑)。ですが、きっとロシア語への興味が深まり、この言語を操るロシア人にも興味を持つことになるでしょう。
この特別編――ブログのタイトルに「経英」とうたっているので、英語を扱っていない本編はあえて「特別編」としました――は、ロシア人の「名前」に関わる4回シリーズで送ります。今回のテーマは「私の名前は一つじゃない?」。いきなり最難関の格変化の話から始めるのは、わたしの受けた衝撃を皆さんと共有したいからです。
固有名詞でさえ変化するロシア語
英語には名詞の格変化は基本的にありません。主語も目的語もすべて「Father」です。
ドイツ語では冠詞が格変化をし、冠詞が修飾する名詞が目的語なのか主語なのかを教えてくれます。大学で第2外国語にドイツ語を選択した方はご存じでしょうが、あの「der(1格)・des(2格)・dem(3格)・den(4格)」です。例えば、父を意味するのは「Vater」ですが、主語には1格(der Vater)を使い、目的語には3格(dem Vater)を使うのです。
さて、ではロシア語に関して皆さんに良い話と悪い話があります。どちらを先に聞きたいですか?
わかりました。それではまず、良い話をしましょう。
ロシア語には冠詞がないのです。英語の文法で悩む、この名詞に「a」をつけるのか、それとも「the」をつけるのかという悩みがまったくないのです!
ブラボー!
では、悪い話は......。冠詞がない代わりに、名詞が格変化するのです。それも、固有名詞までもが変化するのです!
ではここで、トルストイ著作の悲劇の主人公アンナ・カレーニナさんに登場していただきましょう。
Это Анна.(This is Anna.)
Это зонтик Анны.(This is Anna's umbrella.)
Я звоню Анне.(I phone Anna.)
Я люблю Анну.(I love Anna.)
Я работаю с Анной.(I work with Anna.)
お気づきのように、ラテン文字のNはキリル文字ではНです。しかし、注目してほしいのはそこではなくて、赤字の太字はみんな同じアンナさんのお名前なのです。
一番複雑なところから話を始めてしまったと、いま反省しています(笑)。でも、固有名詞が変わるなんて、驚き、桃の木、山椒の木ですね。名前だけはどこでも普遍的だと思っていたわたしの脳天をかち割った話題から始めたかったので。
今日はこのくらいで......。
paka!(またね!)
お問い合わせ
翻訳サービスについてのお問い合わせはこちら