「You insulted me!」って言われた日本人はこの世に何人いる?
February 19, 2019
Aggressiveってほめ言葉?
夫が苦笑いしながら、「俺、『aggressive』って言われちまったよ」と言ってきました。英文のemailでのやりとりを、イギリス人の仲介者が「Your ◯◯◯◯ seems to be rather aggressive.」と忠告してくれたそうです。
「相手の主張に賛成できないから、反論を唱えるしかないんだよ。でも、英語は母国語じゃないだろ。相手も反論してくるから、俺の説明が通じているか不安じゃない? だから、間違いがないように(しつこくねちねちと?)反論の根拠を伝えて......」
わたしも夫も、英語はネイティブではありません。ですが、2人とも「aggressive」がほめ言葉でないことはよく知っています。
留学していたころ、アメリカ社会に積極的に溶け込んでいるように見える人がいて、その人を指して「ここでは外国人なのに、activeでうらやましい」と言ったところ、アメリカ人に「いやいや、彼はactiveではなくaggressive。決して良いことではない」と諭され、「へぇ......、『aggressive』って、ともすればほめ言葉かと思っていたのに、そういうことか」と理解したのでした。
「積極的」≠「aggressive」
日本では、「積極的」を「aggressive」と訳すことが多い。でも、社内のネイティブに聞いてみると、その翻訳は「あまり良くない」と言います。正確に言えば、使って良い文脈と使ってはダメな文脈があるようです。
「An aggressive marketing strategy」などという表現は英語でよく見かけますが、もし「積極的に勧められた」という意味で「he aggressively recommended it to me」と言ってしまうと、「押しの強い勧め方をされた・押しつけられた(「強引」に近い)」という、非常にネガティブな表現になってしまいます。だから、そんな時、英語では「actively」を使うことが多いんです。「positively」「proactively」を使うこともあります。
You insulted me!(馬鹿にすんな!)
夫を慰めようとして、ふと、とっておきのエピソードを思い出しました。
「『aggressive』なんて大したことないよ。わたしなんて、『You insulted me!』って留学先の先生に言われたんだから!」
英語がネイティブじゃないわたしだって、その先生がカンカンに怒っていたことくらいわかる。「You insulted me!」って、どれくらい強い怒りを表す言葉なんだろうか? 灰皿でも投げつけて、「馬鹿にすんな!」ってタンカを切る感じ?
ケロッグビジネススクールに留学していた時、アメリカ人と一緒に初級ドイツ語を習えば、きっと英語の自信もつくだろうという考えから、ドイツ語を習っていました。他の生徒よりちょっとだけドイツ語が上手だったわたしは、「こういう風に授業をやってほしい」と先生にリクエストを出したのです。そうしたところ、先生は真っ赤になって怒り出し、「その学習方法は、自分がもっとも否定すべきだと考えている学習法だ。キミは僕の教え方を否定するのか!」と激しく罵り、そのあとに「You insulted me!」と言ったのです。
それを聞いた夫は笑い転げて、「世界広しと言えども、『You insulted me!』なんて大学の先生に言われた日本人はキミくらいだよ。そう言われてなんて答えたの?」「たぶん......『I didn't mean it.』くらいは言ったと思うけど、怒っている先生をいなすような英語力は、それこそ、わたしにはなかったしねぇ......」
今思い起こせば、本当に笑い話です。ちなみにその先生は、その後、罵ったことを悪かったと思ったらしく、卒業の時にわたしにわざわざ独英辞書をくださいました。今でもそれは記念にとってあります(「記念」って何の記念だ??)
このエピソードは、「夫を慰める」という目的を十二分に果たせたようで、寝る間際まで夫は、「『You insulted me!』だって......」とくすくす笑い続けていました。
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