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石原湧樹インタビュー:身体も頭も、自分のすべてをフル稼働させて限界を超える!

はじめに

スキーオリエンテーリング全日本選手権大会で78連覇中と、まさに名実ともに日本のトップ選手である石原選手。東京大学大学院にて、野外調査と化学分析を組み合わせた研究に打ち込むアカデミックな側面も併せ持ちます。
日本のスキーオリエンテーリング第一人者として、自ら環境を切り拓き、進化を続けてきたその視線の先にあるものは何か。2026年に日本(北海道・留寿都)で開催される世界選手権大会を前に何を思うのか、インタビューを行いました。

(取材日:2025年11月)

目次

17年ぶりの日本開催の世界選手権大会にかける意気込み

大里:2026年3月にスキーオリエンテーリング世界選手権大会が日本で開催されます。17年ぶりの日本、北海道・留寿都での開催となり、選手はもちろん応援する側としても燃えているところですが、まずは日本代表に決まった感想を聞かせてください。

石原選手:最も権威ある大会である世界選手権大会が日本で開催されることには、私も特別な思いを持っています。これまで毎年、ヨーロッパで開催される際には、純粋な挑戦者として「相手の領域に乗り込んでいく」という気概を持って臨んでいましたが、迎える側となった今回は、「今こそ我々の力を見せる時だ」と、そんな強い思いでいます。まずは代表に選ばれてほっとしていますし、これから3月まで練習を頑張らなければと思っています。

大里:初めて日本代表に選ばれたのは2017年で、長きにわたって代表の座を堅持してきたわけですが、最初に挑んだ世界選手権大会と、今回ホームで迎える世界選手権大会とでは、どのように違ってきていますか。

石原選手:2017年に世界選手権大会に出場した時は、競技を始めてまだ1年くらいで、種目によっては完走することが精一杯で、「世界を知りにいく」という感じでした。それから10年近くたった今は、中位から上位を目指せるようになっていますし、「自分の土地で他の選手を迎え討つんだ」という志もあり、全く違ってきています。

大里:私の目から見て、目標を達成するための戦略がより具体化した、すごく進化したと感じているのですが、その点についてご自身ではどうですか。

石原選手:そうですね。最初の頃は、もともとクロスカントリーをしていたので、得意な走力を活かし、始めて間もないオリエンテーリングのミスを減らすということに注力していました。オリエンテーリングのスキルが上がってきてからは、走力、ナビゲーション力のどちらも強化して、一つずつ順位を上げるという形でした。
最初の頃は、ナビゲーション力を強化することが即結果につながっていたのですが、徐々に伸びも緩やかになっていきました。次なる課題は、フィジカル面のリミットを押し上げ、走力のスピードをいかに上げていくかだと考えています。

大里:ステージが一段階上がったということですね。改めてスキーオリエンテーリングの競技について少し補足すると、クロカンのスキーを履いて直前に渡された地図のチェックポイントを指示された順番に回り、ゴールするまでのタイムを競うというもの。距離に応じてスプリント、ミドル、パシュートなどの種目がありますが、それぞれの種目の見どころや魅力について、石原選手から語っていただけますか。

石原選手:スプリントは距離が短いだけに、一つの間違いが命取りになるので、選手としては緊張しますね。最大限までスピードを出していくので、見ている人もハラハラドキドキすると思います。ミドルはより複雑なコース設定となり、区間ごとに上り坂が多く体力が試されたり、迷路みたいに入り組んでいたりと様々な特徴があり、地図を読み取るナビゲーションのテクニックが要求されます。パシュートはミドルよりも少し距離が長く、スプリントの結果のタイム差でスタートを切ります。ボリュームゾーンだと10秒の間に5人がスタートをするような時もあり、競り合いになります。最初にゴールした人が1位というわかりやすさも魅力です。他に国別対抗などのリレーもあります。特にリレーは選手が一斉にスタートするので順位がわかりやすく、初めて見る人におススメです。

大里:現地で見ていると、オーロラビジョンに映る必死の形相で全集中している選手の姿を見るのも楽しみです。

10年間積み上げてきた経験にさらに磨きをかけて

大里:中核選手となり、他の選手を引っ張る姿も見られるようになりました。リーダーシップを取っていこうと意識してのことでしょうか。

石原選手:日本の選手は大学を卒業したらやめてしまう人が多いのですが、10年間積み重ねてきたからこそわかってきたこともあります。そういうことを学生や後進にできるだけ伝えたいという思いはあります。それは、限られた時間の中でどのように効率よく練習するかといった技術的なことから、ヨーロッパ遠征により安く行く方法のような実務的な知恵まで、さまざまです。こういう事柄が、次の世代の役に立つといいですね。

大里:選手たちも自然と石原選手の周りに集まっていますよね。石原選手が作る料理もおいしいと評判だと聞きましたよ。

石原選手:自分が食べるのが好きで、普段から料理をしているので、その延長で遠征先でも作っているのですが、みんな喜んでくれているので私も嬉しいです。

大里:今年の遠征スケジュールはどのようになっていますか。

石原選手:11月末から12月にかけてフィンランドの国内大会に2戦出場して、その合間にフィンランドの代表合宿に参加、1~2月はブルガリアとスウェーデンで開催されるワールドカップに出場する予定です。

大里:フィンランドの代表チームの合宿に参加されるということですが、それもご自身で切り拓いてきたのですよね。

石原選手:フィンランドで代表コーチと知り合い、お願いして練習機会を作ってもらいました。国内だと自分以上に速い人がいないので、より強くなるためには「環境を自ら切り拓いていく」ということも必要になってきます。自分よりも速い人に混じり、限界を超える速さでナビしていくことで、自身のレベルアップにつながると考えています。

大里:世界選手権大会の前哨戦となるワールドカップには、どのような思い、目標で臨むのですか。

石原選手:フィンランドで代表コーチと知り合い、お願いして練習機会を作ってもらいました。国内だと自分以上に速い人がいないので、より強くなるためには「環境を自ら切り拓いていく」ということも必要になってきます。自分よりも速い人に混じり、限界を超える速さでナビしていくことで、自身のレベルアップにつながると考えています。

大里:世界選手権大会の前哨戦となるワールドカップには、どのような思い、目標で臨むのですか。

石原選手:まずは、世界ランキングを一つでも上げたいと思っています。というのも、世界ランキング順でスタートするグループが決まるので。一般的に遅いスタートの方が有利と言われているので、世界選手権大会で少しでも優位なスタートを切れるようにすることが目標です。
世界界選手権大会に自信を持って落ち着いた気持ちで臨むためにも、ワールドカップは攻めの姿勢で立ち向かい、いい成績を残したいと思います。

「競技×α」が導くさらなる成長

大里:石原選手は現在、東京大学大学院に在籍し、研究者としての一面もあります。以前、学部生の頃に話を伺った時は、地質学と地球化学を勉強していて、実際にカナダまで行って岩石を採集し、その中にある元素を調べて、地球の黎明期に生物がいたかどうかなどを明らかにする研究をされていると聞きました。その後の進捗はどうですか。

石原選手:実は昨年、そして今年もカナダとグリーンランドで様々な岩石を採集してきました。採集する地域も広げ、岩石ができた頃の環境を数値計算して再現することにもチャレンジしています。様々な地域、年代の岩石を扱うことで「環境の変化が岩石生命の進化にどういう影響を及ぼしているのか」など、より汎用的な理論へと研究を深めていきたいと考えています。

大里:私は常々、競技と仕事・研究とが互いにいい影響を与え合うような関係であってほしいと思っているのですが、石原選手の場合はどうでしょう。

石原選手:共通点を挙げると、一つは精神論になりますが、「とことん究める」「未知への挑戦」というところは共通しているかなと思います。オリエンテーリングの練習では満足いくまで全力を出し続けるのですが、それは研究も一緒で、例えば露頭(地表に露出している地層や岩石等)の観察やデータ分析においても「このくらいでいいかな」と簡単に切り上げるいうことはありません。
もう一つは端的に言えば「体力・」「粘り強さ」ですね。今年はカナダに加えてグリーンランドにも地質調査に行ってきたのですが、持ち帰った岩石の量は1トンにも及びます。毎日、朝6時から夜11時まで調査をしていて、体力はもちろん忍耐力や集中力が要求されるのですが、これらもアスリートの領分と重なるところです。
将来は研究職に就き、地球の昔のことを様々な方法で解き明かしていきたいと思っています。

大里:アークスキーチームを知ったのは、クロスカントリーの恩田選手を通じてだったと聞いていますが。

石原選手:そうです。当時の私にとって、アークコミュニケーションズは"恩田さん所属のナゾの会社"でした(笑)。長きにわたって日本のスキーオリエンテーリングの第一人者として牽引してきた堀江さんもアークスキーチームの所属で、私に声をかけてくれたことが直接的なきっかけになったのですが、「あの堀江さんが期待してくれている」というのは大きな自信になり、また誇りにも思いました。
スキーチームに所属するようになってから、アークコミュニケーションズの学生インターンにも参加。その頃には翻訳やWeb制作を行う会社だということは知ってはいましたが、任された仕事は校正作業やラベル貼りなど地味で根気のいるものが多く、情報化された社会を支えているのは、こうしたコツコツとした実直な仕事なんだと改めて思いました。これは、自分の研究にも通じることですが。

大里:スキーチームの一員として他競技の選手と交流する機会も増えたと思うのですが、そこから得られたものはありましたか。

石原選手:それは大いにあります。フルタイムで働きながら、世界の扉が厚いとされるフットオリエンテーリングに挑戦し続ける小牧選手の姿には常に刺激を受けていますし、先日のスキー連盟100周年のイベントでは関係者の多さに圧倒されるなど、視野も広がっています。

大里:アークコミュニケーションズはデザイン制作も行っているため、今回、新しい日本代表ウェアもボランティアで制作しています。アークスキーチームのウェアも一新し、石原選手にも関わっていただきました。

石原選手:オリエンテーリングの場合は地図ホルダーを首から下げるので、その位置だとホルダーに隠れてしまって見えないなど、細かな点での調整をお願いしたりもしました。とても格好いいものに仕上がったと思っています。

大里:代表ウェアは、国旗カラーの赤・白だと他国と重複してしまうことの多いので、赤は使わずに、一目で日本とわかり、かつ「格好いい」「速そう」と思ってもらうにはどうすればいいか、皆で知恵を絞ってつくりあげたデザインとなっています。皆さんにもぜひご覧いただきたいので、毎月お届けするメルマガに画像をたくさん掲載していきます。

応援してくれる皆さんへの感謝を走りで伝えたい

大里:2026年に世界選手権大会が日本で開催されるわけですが、ホームタウンならではの強みについてはどう感じていますか。

石原選手:まず時差がないということ、そして普段通りの生活環境で、コースも慣れた条件の中でできるということは大きな強みだと感じています。例えば雪の状態一つとっても、ヨーロッパは薄くて硬いのに対して、北海道は厚く軟らかいという違いがあります。

大里:目標はどこに定めているのですか。

石原選手:20位以内に入るというのが現実的な目標ですが、条件さえ合えば入賞も狙える位置にきていると思います。

大里:周りの人に期待すること、こういうところを見てほしいということはありますか。

石原選手:滅多にない日本開催なので、ぜひ現地に観戦に来てほしいと思います。「頑張れ」という声援は選手にとって、ものすごく大きな力になります!
スキーオリエンテーリングは、体も頭もフル回転させて最大限に追い込まれた状況で力を出し切る、まさに"限界に挑戦するスポーツ"です。限界を超えようと、選手たちが己のすべてを使って必死に駆け抜ける様を見てほしいと思います。

大里:世界のトップ選手は、すごいスピードで複雑な道をスイスイ行っていて、「いつ地図を見ているんだろう」と不思議に思うほど。極限状況でスピードをできるだけ落とさずに地図を正確に読み取るために、普段からどういう練習をしているのかも気になります。

石原選手:一番効果があるのは、スキーオリエンテーリングの経験則を積むということですが、それは機会が限られているので、普段の練習としては平らな雪のある場所で8八の字を描きながら滑り、その交差点を「地図上の交差点」になぞらえてイメージトレーニングしたりしています。ほかにも部屋の中で、机に地図を広げてじっくり検討するというのに加え、腹筋や腕立て伏せをしながら疲れた状態で地図を見て、正しいルート選択ができたかを検証するという反復練習もします。

大里:平常時にできる暗算を、体力の限界に来て息が上がった苦しい時にもできるようにする訓練をしているのですね。競技の先に追いかける夢はありますか。

石原選手:日本のトップチームを作り上げるというのが私の大きな夢です。今まで10年以上スキーオリエンテーリングをしてきた経験を活かして日本チームをトップへと引き上げるということに、人生を賭けて取り組んでいきたいと思います。

大里:最後に応援してくれている皆さんへのメッセージをお願いします。

石原選手:私が10年間にわたって競技を続けてこられたのも、アークコミュニケーションズをはじめ皆さんの応援があったからこそです。自分が楽しくて、強くなりたいという思いを持っていたというのはもちろんなのですが、応援してくれる人がいたからモチベーションも高まり、環境もサポートしてもらって、すごくありがたいと思っています。その成果を結果で見せる時が、この日本開催の世界選手権大会だと思っています。「皆さんのおかげで、こんなに自分はできるようになった」と結果で感謝を伝えられるように、世界選手権大会まで精一杯、練習に励んでいきたいと思います。「今までありがとうございます、そして頑張るのでこれからもよろしくお願いします」ということを言葉だけでなく、走りでも伝えたいと思います。

インタビューを終えて

石原湧樹選手と出会ったのは、彼がまだ大学1年生の頃でした。早いものであれから10年が経とうとしています。 彗星のごとく頭角を現し、瞬く間に日本一へ。さらに世界を目指す過程で幾度となく壁に直面しながらも、それらを地道な努力で一つひとつ乗り越えていく姿は、私たちアークコミュニケーションズが成長していく上でも大きなお手本となってきました。
ワールドユニバーシティゲームズ(大学生のオリンピック)では日本代表チームの監督として帯同するなど、後進の指導においてもその手腕を発揮しており、まさにスキーオリエンテーリング界の未来を切り開く存在です。
2026年3月、17年ぶりに日本で開催される世界選手権大会。地の利を生かし、さらなる飛躍を遂げられるよう、石原選手へのご支援を心よりお願い申し上げます。

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