対談記事

2019年1月

プレインイングリッシュを活用し、各国言語による国別ウェブサイト展開に挑戦

「やってみなはれ」――サントリーの成長力の源泉となる創業者鳥井信治郎の精神を胸に、サントリーホールディングス コーポレートブランド戦略部が現地のグループ会社と一緒になって、海外の各国向けウェブサイトを展開しようとしています。最初の展開としてサントリーが選んだのは、ベトナム国向けサイト。わたしたちアークコミュニケーションズは、このベトナム国向けサイトにおいて英語・ベトナム語翻訳を担当させていただきました。本サイトは、ベトナム語ページとともに英語ページを併設し、現地スタッフとの情報共有や、続く多国への展開に備える役割も担っています。ベトナム語への翻訳ベースとなったのがプレインイングリッシュでした。いまだその解釈に難しさが伴うプレインイングリッシュの考えをあえて取り入れ、そこからの多国語展開に挑んでいるこのプロジェクトも、まさにサントリーの「やってみなはれ」精神の一つとも言えるのではないでしょうか。

左より 伊藤、キンバリー、大塚様、大里、相川様、馬場

プロフィール
相川 太郎      サントリーホールディングス株式会社 コーポレートブランド戦略部 課長
大塚 江美      サントリーホールディングス株式会社 コーポレートブランド戦略部 課長代理
大里 真理子     株式会社アークコミュニケーションズ 代表取締役
馬場 浩昭      株式会社アークコミュニケーションズ 翻訳事業部 事業部長
伊藤 昌徳      株式会社アークコミュニケーションズ 翻訳事業部 チーフプロジェクトマネージャー
キンバリー モーガン 株式会社アークコミュニケーションズ 翻訳事業部 プロジェクトマネージャー

「SUNTORY」の名を世界に

大里:御社の国別コーポレートウェブサイトの翻訳にかかわらせていただいて大変嬉しく存じます。まずは、御社内における当プロジェクトの位置づけや戦略についてお教えいただけますでしょうか?

相川様:簡単に経緯をお話しさせていただくと、サントリーは21世紀に入ってから、さらなる成長のためにM&Aによるグローバル展開を加速し、海外拠点を増やしていきました。そうした中で「サントリーを海外においても信頼あるブランドとして確立したい」という思いが出てきたのです。

大里:国内では誰もが知っている「SUNTORY」さんですが......。

相川様:いえいえ、いまだに海外の多くの人は、会社名や商品を見ても「SUNTORYっていったい何?」となるんです。そこで、まずはグローバル向けにウェブサイトやSNSアカウントを作り、英語での情報発信基盤をつくりました。しかし、各国のローカル事情まで考えると、これだけでは十分に情報が届かないことがわかりました。英語を母国語としない国々でも事業をしていますので、各国の状況に合わせた情報発信をしようということで、国別コーポレートウェブサイトのプロジェクトを発足させたのが2017年です。

大里:グローバルウェブサイトを単純に各国語に翻訳するという方法は採用しなかったわけですね。

相川様:グローバルウェブサイトは、ローカル向けには情報が足りない半面、世界中の情報を掲載しているため、国によっては情報が無駄に多いという課題もありました。そこで、現地の事業会社と一つひとつプロジェクトを組んで、まったく新たなサイトづくりを進めていこうとなったのが、このプロジェクトの始まりです。その最初の展開が、今回のベトナム国向けサイトという位置づけになります。

ベトナムから多国語展開が始まる

大里:なぜ、ベトナムからスタートさせたのですか?

相川様:一定規模以上の売上があり、今後も成長が見込める国の中、文化・社会的背景も考慮しながら検討した結果、条件に合致したのがベトナムでした。さらに、新たな言語へのトライアルという意味で「公用語が英語ではない国」という条件もありました。

大里:ベトナム国向けサイトとしてベトナム語を扱うのは当然ですが、なぜそのサイトで英語も扱おうとお考えになられたのですか?

大塚様:理由は2つあります。まず一つは、現地のスタッフと一緒に作り上げるプロジェクトですので、お互いの共通言語が英語になるということです。製作過程でコンテンツの内容を共有したり承認したりする時に、現地語だけだとわかりませんし、出来上がったベトナムサイトをほかの国の担当者に伝える際にも、英語は必要なんです。もう一つは、アジアではトップの方がローカル出身ではないケースもあるので、やはり英語サイトは重要と感じていました。

プレインイングリッシュへのチャレンジ

大里:英語翻訳の指針として、明快に「プレインイングリッシュ」とご指定いただきましたが、どのような意図があってお選びになられたのでしょうか?

大塚様:一つには、英語を読む方がネイティブではない可能性があるので、わかりやすい英語にするということと、もう一つは、多国語化という観点から、わかりやすい英語で翻訳の原文を準備することと言っていいでしょう。ところでお忘れのようですが、プレインイングリッシュというものがあることを教えてくださったのは大里さんですよ(笑)。

大里:そうでしたっけ?(笑) プレインイングリッシュはその名の通り「平易な英語」のことで、もともとは英国や米国でさまざまな人にも伝わるようにと、政府の文書において使われ始めたものです。今では、「英語を母国語としない方々にも簡単で正しく伝わる英語」というふうに、その定義も広くなりました。実際にプレインイングリッシュを採用して、どうだったでしょうか?

大塚様:大変わかりやすく、今後の多国語化も視野に入れた良い翻訳になったと思います。ただ当社の場合は、単純にプレインイングリッシュに翻訳すればいいということではなく、「どの程度プレインイングリッシュにするか」がポイントなんだということが、御社との議論の中で次第に理解できるようになりました。

大里:プレインイングリッシュの「誰にでも伝わる」という目的は世間で共有できていると思いますが、「どう実現するか」という具体的な部分は決まった定義があるわけではありません。いくつかのスタイルもありますので、御社に最適なプレインイングリッシュを探し続けたのが、このプロジェクトを通してわたしたちがチャレンジしたテーマでもありました。

大塚様:確かにその作業の部分ですごく時間がかかったという印象がありましたが、その分しっかりとガイドラインにまとめていただき、今後もブレずに翻訳できるようになったことは、大変感謝しています。

大里:担当のキンバリーは、プロジェクトをどのような方針で進めていったのですか?

キンバリー:最初はすべてをフラットなプレインイングリッシュにしたのですが、サントリーさんから、特にメッセージ性のある部分については「伝えたいパッションを削ぎ落とさないように」とフィードバックを受けました。そこで、メッセージ性の高い部分では、語感の豊かさを失わないようにとプレインイングリッシュ化を少し控えるなど細かな調整をしています。