対談記事

2016年1月

世界を変えていく意志を持ったリーダーに貢献する−DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー

アメリカ国内で29万人のエグゼクティブに購読され、日本、ドイツ、イタリア、BRICs諸国、南米主要国など世界12カ国、60万人のビジネスリーダーやプロフェッショナルに愛読されている、マネジメント誌「ハーバード・ビジネス・レビュー」。
アークでは、創業時よりその日本版である「DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー」の翻訳のお手伝いをしてきました。
今回は同誌の岩佐編集長、小暮晶子さんをゲストに迎え、横断的に最先端の知見をカバーし、グローバル・リーダーを刺激し続ける誌面作りの秘密をうかがいました。

左より齊藤、小暮様、岩佐様、大里

プロフィール
岩佐 文夫 株式会社ダイヤモンド社 「DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー」編集長 2000年ダイヤモンド社入社、2012年より現職
小暮 晶子 株式会社ダイヤモンド社 「DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー」
大里 真理子 株式会社アークコミュニケーションズ 代表取締役
齊藤 まなみ 株式会社アークコミュニケーションズ 翻訳・ローカリゼーション チーフプロジェクトマネージャー

世界を変えていく意志を持った
リーダー向けのマネジメント誌

大里:ビジネス・スクールに通った人は誰もが教科書として活用している「ハーバード・ビジネス・レビュー(以降、HBR)」と御誌 「DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー(以降、DHBR)」ですが、馴染みのない方のために簡単にご紹介いただけませんでしょうか?

岩佐様:「DHBR」は、アメリカのハーバード・ビジネス・スクールが発行する「HBR」の日本語版で、来年で40周年を迎える総合マネジメント誌です。
「HBR」の創刊は1922年、現在は12カ国で翻訳発行されていますが、「DHBR」は初めての海外版として1976年にスタートしました。当初は隔月刊でしたが、2000年10月から月刊として新創刊されています。加えて、母体となっているハーバード・ビジネス・スクールは、経営学修士プログラムMBAを作った世界最古のビジネス・スクールです。
そんな世界最高峰の経営大学院が出しているマネジメント誌ということで、世界的にエグゼクティブが読むハイクオリティな雑誌として位置づけられています。

大里:主な読者はやはり役員クラスの方々なのでしょうか?

岩佐様:半分が大企業の役員以上の人たち。もう半分は30代、40代前半の将来的に経営層を目指している人たちです。また、NPOの代表を務める方々も読んでくださっています。
ですから、経営層である以上に、リーダーとして社会を変えていく意志を持った人たちに読まれていると考えています。

大里:毎号クオリティ高い誌面を作り出す編集部の体制はどのようになっているのですか?

岩佐様:編集部は、僕よりも「DHBR」歴の長い小暮と、20代、30代、40代の編集者が1人ずつの5名体制です。
MBAを持っている人間は1人もいませんが、取材などを通じて経営層の話を聞き、彼らの問題意識を知ること。そして、彼らに響くポイント、響かないポイントをつかむこと。編集者としてのある種の勘を共有したチームです。
ただ、雑誌の編集者の仕事は基本的に企画を決め、それぞれのプロにお願いすることです。誌面の6割を占める翻訳記事については、アークさんを始め、翻訳者の方にお世話になり、「DHBR」の大きな価値の1つであるデザインに関しては月刊化以降ずっと同じデザイナーさんにお願いしています。
その他、ライターさん、校正者さん、カメラマンさん、印刷会社さん、毎号、外部の方に手伝っていただきながらやっています。

ブレることのない編集方針と
時代とともに変化する誌面

大里:私たちは岩佐さんを含め、歴代3人の編集長とお仕事をさせていただいています。やはり編集長が変わられると誌面の雰囲気も変わるという印象を持っています。現在の編集方針についてお聞かせください。

岩佐様:「優れたリーダー人材に貢献する」「グローバル・リーダーを目指す人の総合マネジメント誌」という「DHBR」の基本的な編集方針に変更はありません。ただ、時代の要請や「HBR」の本誌の変化、編集長の興味や強みという3つの要因によって、誌面が変わっているのはたしかです。

大里:「HBR」本誌の論文の翻訳がほとんどだった時代を知っているものとしては、岩佐編集長となってから特に日本オリジナルのコンテンツが増えた印象があります。

小暮様:そうですね。前編集長の岩崎はハーバードならではの最先端の論文を丁寧に読者に紹介するというスタンスでした。岩佐はそこに日本独自の色合いを加えているというのが、一緒に仕事をしている私の印象です。

岩佐様:僕が編集長になった時に考えたのは、「DHBR」をもう少しだけ身近に感じてもらいたいということでした。ハーバードが発するメッセージを日本の読者がより自分の事として受け止めるためにも日本独自の記事を増やしています。
加えて、僕はインタビューが好きなんですよね。頭の中には常に、誌面に登場してもらいたい人のリストがあります。有り難いことに「DHBR」の取材申込が断られたことはあまりないんですよね。創刊以来の先輩たちが築き上げてきたブランド力を借りながら、インタビューしまくっているとも言えるかもしれません(笑)。

大里:断られたことがあまりないなんて、本当にうらやましい限りです。ところで、私は「DHBR」が届くと、真っ先に、次号は何が特集テーマなのかな......と確認するんです。

岩佐様:そんな読み方をするのは大里さんだけだと思いますよ(笑)。

大里:毎号の特集のテーマはどのように決めていかれるのですか?

岩佐様:起点となるのは、「HBR」が何を載せているかです。例えば、2015年の「HBR」の6月号では「人工知能」の特集が組まれていました。これは日本に伝えるべきだと思い、独自の取材とインタビュー記事を組み合わせ、特集にまとめました。
一方で、この特集は日本の読者にとって魅力的ではないなと感じた時は、「HBR」の特集をばらし、既存の論文と組み合わせ、新たな特集テーマとしてまとめることもあります。
実はこの作業が編集の最重要ポイントの1つで、アークさんを始めとする翻訳会社、翻訳者さんに訳していただいた「HBR」の論文を読みながら、「これがおもしろいから、これを軸に使った特集ができないか?」と考え、日々、編集会議を繰り返しています。