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対談記事
2016/01/05

世界を変えていく意志を持ったリーダーに貢献する−DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー

  • 翻訳・通訳

世界を変えていく意志を持ったリーダーに貢献する−DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー

アメリカ国内で29万人のエグゼクティブに購読され、日本、ドイツ、イタリア、BRICs諸国、南米主要国など世界12カ国、60万人のビジネスリーダーやプロフェッショナルに愛読されている、マネジメント誌「ハーバード・ビジネス・レビュー」。
アークでは、創業時よりその日本版である「DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー」の翻訳のお手伝いをしてきました。
今回は同誌の岩佐編集長、小暮晶子さんをゲストに迎え、横断的に最先端の知見をカバーし、グローバル・リーダーを刺激し続ける誌面作りの秘密をうかがいました。

左より齊藤、小暮様、岩佐様、大里

プロフィール
岩佐 文夫 株式会社ダイヤモンド社 「DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー」編集長 2000年ダイヤモンド社入社、2012年より現職
小暮 晶子 株式会社ダイヤモンド社 「DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー」
大里 真理子 株式会社アークコミュニケーションズ 代表取締役
齊藤 まなみ 株式会社アークコミュニケーションズ 翻訳・ローカリゼーション チーフプロジェクトマネージャー

世界を変えていく意志を持った
リーダー向けのマネジメント誌

大里:ビジネス・スクールに通った人は誰もが教科書として活用している「ハーバード・ビジネス・レビュー(以降、HBR)」と御誌 「DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー(以降、DHBR)」ですが、馴染みのない方のために簡単にご紹介いただけませんでしょうか?

岩佐様:「DHBR」は、アメリカのハーバード・ビジネス・スクールが発行する「HBR」の日本語版で、来年で40周年を迎える総合マネジメント誌です。
「HBR」の創刊は1922年、現在は12カ国で翻訳発行されていますが、「DHBR」は初めての海外版として1976年にスタートしました。当初は隔月刊でしたが、2000年10月から月刊として新創刊されています。加えて、母体となっているハーバード・ビジネス・スクールは、経営学修士プログラムMBAを作った世界最古のビジネス・スクールです。
そんな世界最高峰の経営大学院が出しているマネジメント誌ということで、世界的にエグゼクティブが読むハイクオリティな雑誌として位置づけられています。

大里:主な読者はやはり役員クラスの方々なのでしょうか?

岩佐様:半分が大企業の役員以上の人たち。もう半分は30代、40代前半の将来的に経営層を目指している人たちです。また、NPOの代表を務める方々も読んでくださっています。
ですから、経営層である以上に、リーダーとして社会を変えていく意志を持った人たちに読まれていると考えています。

大里:毎号クオリティ高い誌面を作り出す編集部の体制はどのようになっているのですか?

岩佐様:編集部は、僕よりも「DHBR」歴の長い小暮と、20代、30代、40代の編集者が1人ずつの5名体制です。
MBAを持っている人間は1人もいませんが、取材などを通じて経営層の話を聞き、彼らの問題意識を知ること。そして、彼らに響くポイント、響かないポイントをつかむこと。編集者としてのある種の勘を共有したチームです。
ただ、雑誌の編集者の仕事は基本的に企画を決め、それぞれのプロにお願いすることです。誌面の6割を占める翻訳記事については、アークさんを始め、翻訳者の方にお世話になり、「DHBR」の大きな価値の1つであるデザインに関しては月刊化以降ずっと同じデザイナーさんにお願いしています。
その他、ライターさん、校正者さん、カメラマンさん、印刷会社さん、毎号、外部の方に手伝っていただきながらやっています。

ブレることのない編集方針と
時代とともに変化する誌面

大里:私たちは岩佐さんを含め、歴代3人の編集長とお仕事をさせていただいています。やはり編集長が変わられると誌面の雰囲気も変わるという印象を持っています。現在の編集方針についてお聞かせください。

岩佐様:「優れたリーダー人材に貢献する」「グローバル・リーダーを目指す人の総合マネジメント誌」という「DHBR」の基本的な編集方針に変更はありません。ただ、時代の要請や「HBR」の本誌の変化、編集長の興味や強みという3つの要因によって、誌面が変わっているのはたしかです。

大里:「HBR」本誌の論文の翻訳がほとんどだった時代を知っているものとしては、岩佐編集長となってから特に日本オリジナルのコンテンツが増えた印象があります。

小暮様:そうですね。前編集長の岩崎はハーバードならではの最先端の論文を丁寧に読者に紹介するというスタンスでした。岩佐はそこに日本独自の色合いを加えているというのが、一緒に仕事をしている私の印象です。

岩佐様:僕が編集長になった時に考えたのは、「DHBR」をもう少しだけ身近に感じてもらいたいということでした。ハーバードが発するメッセージを日本の読者がより自分の事として受け止めるためにも日本独自の記事を増やしています。
加えて、僕はインタビューが好きなんですよね。頭の中には常に、誌面に登場してもらいたい人のリストがあります。有り難いことに「DHBR」の取材申込が断られたことはあまりないんですよね。創刊以来の先輩たちが築き上げてきたブランド力を借りながら、インタビューしまくっているとも言えるかもしれません(笑)。

大里:断られたことがあまりないなんて、本当にうらやましい限りです。ところで、私は「DHBR」が届くと、真っ先に、次号は何が特集テーマなのかな......と確認するんです。

岩佐様:そんな読み方をするのは大里さんだけだと思いますよ(笑)。

大里:毎号の特集のテーマはどのように決めていかれるのですか?

岩佐様:起点となるのは、「HBR」が何を載せているかです。例えば、2015年の「HBR」の6月号では「人工知能」の特集が組まれていました。これは日本に伝えるべきだと思い、独自の取材とインタビュー記事を組み合わせ、特集にまとめました。
一方で、この特集は日本の読者にとって魅力的ではないなと感じた時は、「HBR」の特集をばらし、既存の論文と組み合わせ、新たな特集テーマとしてまとめることもあります。
実はこの作業が編集の最重要ポイントの1つで、アークさんを始めとする翻訳会社、翻訳者さんに訳していただいた「HBR」の論文を読みながら、「これがおもしろいから、これを軸に使った特集ができないか?」と考え、日々、編集会議を繰り返しています。

世界を変えていく意志を持ったリーダーに貢献する−DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー

良い翻訳に欠かせない
日本語の豊かさと素直さ

大里:翻訳会社としては御社にできるだけ編集の負荷をかけないようにと思い、翻訳に工夫を凝らしています。とはいえ、雑誌作りにおいては編集を加えるケースが多いと思います。
その際、「DHBR」ではどういった観点でどのように編集を加えていらっしゃるのでしょうか。これは私どもにとっても、私どものお客様にとっても興味深いところだと思います。

小暮様:訳文に手を加える際のポイントは2つあります。
1つは説明が不足していると感じた部分に付加価値情報を足すことです。例えば、この略語、この人名は、そのままでは読者に伝わらないという部分について編集部で調べ、追記していきます。
もう1つは、文章を日本語らしく読みやすくし、内容がストレートに伝わるように変えることです。

齊藤:プロジェクトマネージャーとして御社の翻訳を担当させていただきながら、いつも驚いているのがタイトルの付け方です。私たちも翻訳者とともに、論文のタイトル、冒頭の翻訳には本当に力を入れているのですが......。

岩佐様:誌面が仕上がってみると、タイトルがまったく変わって出てくることもあるでしょう。

齊藤:はい。それもすごく印象的な言葉に置き換えられていて、「どうやったらあのタイトルに変わるんだろう?」と翻訳者とも話しています。
最近、印象に残っているのは「戦略人事」特集の論文タイトルの「shiny object」という表現です。「カタカナにしただけでは通じないよね」ということになり、どういう日本語に置き換えたらいいのだろう......とずいぶん考えましたが、御社が誌面で出した答えはもう一歩上をいくものでした。

岩佐様:最終的にはどういうタイトルになったんだっけ?

小暮様:「魅惑的な人事手法に飛びつくな」です。

岩佐様:あれは悩んだね。

小暮様:「shiny object」という言葉は、タイトルには使われているのですが、「HBR」の本文には、そんなに出てきません。しかし、論文で言いたいことを象徴している言葉ではあります。そこでなんと言い換えられるか考え、「誰もが飛びつきたくなるような魅力のあるもの」としてみました。
でも、魅力というよりももっと惑わされるようなニュアンスがいいと思い、魅惑的ということにして「魅惑的な人事手法」としました。

齊藤:なるほど。いつも小暮さんがそういった判断をされているんですか?

小暮様:各担当者全員がそれぞれにやっています。アークさんなり、他の会社さんから出てきたものを割り振り、みんながそれぞれに一生懸命、頭を悩ませ、タイトル会議を行っています。

大里:タイトル会議は、かなり時間をかけて?

小暮様:かけますね。

岩佐様:タイトルは正しい文章だからいいというものでもないんですよね。おもしろくなくちゃいけない。

小暮様:実際、どう編集するかの判断は編集者もいつも迷っています。これが正解!杓子定規には決められないので、試行錯誤の連続です。

大里:では、御社が望む良い翻訳とはどういったものでしょう?

小暮様:私は、翻訳は日本語力だと思っています。翻訳者の読書量や経験、知識が適切な表現を選ぶ能力と関係していて、訳文のうまい下手には日本語の豊かさがかなり影響すると思います。

岩佐様:僕の仕事は編集後の原稿の最終チェックなので、原文との付き合わせはしていません。ですから、僕のところにくる原稿が悪かったら、それは翻訳者のせいではなくて、編集者が悪いわけです。
その前提で言うと、良い翻訳は僕の友だちが冒頭を読んで「これ、おもしろそう」と感じること。そして、もう1つ言うと、僕は原稿を声に出して読むんですよ。すると、英語の構文が日本語として残っているような原稿は、発音した時に引っかかりがあって違和感があるんですよね。

小暮様:ゴツゴツしている翻訳ですね。これは編集時に手直しするのも大変で、できるだけ日本語として素直な翻訳だとありがたいですね。すーっと読める文章。繰り返しになりますが、そのためには日本語の豊かさが重要になってきます。
その点、アークさんの翻訳は素直さだけでなく、安定感があり、毎号助けていただいています。

岩佐様:「DHBR」のクオリティを保つためにもアークさんの協力が続いていくことを願っています。

大里:私たちとしては、御社の期待にさらに応えるためにも、定番の翻訳者にプラスして、新しい翻訳者を紹介することを齋藤に心がけさせています。

岩佐様:それはありがたいですね。どういった基準で探してくださっているんですか?

齊藤:重視しているのは、調査能力、柔軟性、情熱の3点です。
先ほどの特集のタイトル付けのお話からも伝わるように、「DHBR」は非常に多くの時間をかけ、情熱を持って編集をされています。ある意味、同じ感覚で翻訳をしていく翻訳者でなければ、同じ船に乗れないと私たちとしても考えています。その価値観を共有し、仕事に取り組む姿勢を過去のプロファイルよりも重要視しています。

継続して読み続けることで
ニュースの本質が見えてくる

大里:最後に、今回の記事を読んで「DHBR」に関心を抱いた方に向けて、「DHBR」を読むことで身につく力を紹介していただけますか?

岩佐様:僕は、応用力だと思っています。例えば、「ソニーが不動産ビジネスに参入しました」というニュースを目にしたとしましょう。そういった個別の経済ニュース記事は「DHBR」には掲載されていません。
しかし、「DHBR」を継続して読んでいると、「ソニーが不動産ビジネスに進出して何をやろうとしているのか」を類推することができるようになります。これは新しいビジネスモデルのあり方や有効なマネジメントの手法が、自然と頭の中に入ってくるからです。すると、日々のニュースが伝える内容の本当の意味がわかってきます。
「あの業界のあの戦略もじつは自分たちがやろうとしていることと同じだ」と。そんなふうにメタレベルでのつながりを感じられたら、おもしろいんじゃないかなと思います。

大里:そうですね。私も20代でビジネス・スクールに留学して、「HBR」を読んでいた頃に比べて、今の方がはるかに実務とひも付けながら読み込めている気がします。本日のお話をうかがって、さらに「DHBR」のページを開く楽しさが増えました。本日は、貴重なお話をありがとうございました。

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