対談記事

2014年7月

DATSUNが新興国マーケットを拓く!− 営業用タブレットツールのUXデザイン − 日産自動車株式会社

日本の基幹産業である自動車産業。そのグローバル化の新しいトレンドは新興国マーケットの開拓です。新興国には、インド12億人、インドネシア・ブラジル2億人など、1億人以上の人口を抱える巨大市場が多く、また新富裕層が登場するなど非常に魅力です。このような背景のもと、日産自動車は新興国向けの戦略ブランドとして、DATSUN(ダットサン)を誕生させました。DATSUNといえば、かつて世界を席巻したブランドですが、今回は当時のブランドイメージとは異なるポジションのブランドとなるようです。今回アークコミュニケーションズがご協力したのは、このDATSUNが現地セールスに使用する、タブレットを活用した新しい営業ツールのUX(User Experience)デザインです。
これは、従来商談で使われてきた紙のカタログを進化させたものです。タブレットに置きかえることで、お客様により深く、よりわかりやすく、クルマの魅力を体感していただけます。さらにクルマのカスタマイズや見積などもこのツール上でかんたんに実現し、お客様の購入行動に結びつけやすくすることを狙ったツールです。
今回は日産自動車のDATSUNブランドでの新しい取り組み、販売戦略などをご紹介いただくとともに、この営業ツールについてお話を伺いました。

プロフィール
泉 信吉様 日産自動車株式会社 ダットサン事業本部マーケティング・プロダクトプランニンググループ 主管
中川 香織様 日産自動車株式会社 グローバルマーケティングストラレジー本部デジタルストラテジー部 主担
森澤 千寿様 日産自動車株式会社 グローバルマーケティングストラテジー本部デジタルストラテジー部
樗木 翔太郎様 日産自動車株式会社 グローバルマーケティングストラテジー本部デジタルストラテジー部
大里 真理子 株式会社アークコミュニケーションズ代表取締役
佐藤 佳弘 株式会社アークコミュニケーションズWeb事業部長
柴田 真一郎 株式会社アークコミュニケーションズ Web&クロスメディア事業部 チーフディレクター

DATSUN

大里:まず、DATSUNというのは日産の古くからのブランド名として懐かしさを感じる方も多いかと思いますが、そのブランド復活の背景について教えていただけますか?

泉様:今回DATSUNブランドを投入するのはインド、インドネシア、ロシア、南アフリカの4つの新興国です。南アフリカは例外なのですが、その他の国々ではかつてのDATSUNブランドはほぼ市場参入していなかった、もしくはしていても遠い昔の話で、かつてのDATSUNブランドが復活した、という日本をはじめとする先進国の受け取り方とは大きく異なります。

大里:DATSUNというと、私は古いアメリカ映画などに登場する大型のピックアップトラックを思い出すのですが、今回はそうではないのですか?

泉様:そうですね。かつてのDATSUNとはブランド・ポジションも大きく違います。自動車業界では今後、大きく3つの変化があると言われています。一つ目は「新興国」、二つ目が「環境技術」、三つ目が「小型化」です。DATSUNは、このうちの2つ、「新興国」と「小型化」の流れへの取り組みと位置づけられます。

大里:なるほど、全く違うイメージですね。

泉様:2000年ごろの世界の自動車市場の分布は先進国が6割、新興国が4割という状況でした。しかし、その分布も、今後は新興国が6割に逆転すると予測されています。私たち日産自動車は、これまで、先進国の市場・ニーズに合わせた製品開発を行うことを優先してきましたが、これからは、新興国のマーケットを意識した製品の開発や市場投入も重視する必要があると考えています。その取り組みを行うためのブランドがDATSUNというわけです。

新興国に向けたクルマづくり

大里:新興国のマーケットをターゲットにした車種展開とは具体的にはどういうものでしょうか。

泉様:日産にはNISSAN、Infinitiといったブランドがありますが、これらのブランドではカバーしきれない、初めて新車を購入されるという方々に対する、いわゆるエントリーセグメントにフォーカスしています。

佐藤:新しい市場で、新しいセグメントとは、戦略が非常に難しいですね。

泉様:そこは、どうしてもトライアル&エラーにならざるを得ないと思います。クルマを初めてお買い求めになるお客様に向けて、適した説明・プロセス・サービスをディーラーサイドで提供するわけですが、ディーラーも新規立ち上げなので大きなチャレンジとなります。今回ご協力いただいた営業ツールもそれを可視化するツールとして重要な位置を占めるものと期待しています。

佐藤:新興国の場合、日本のように自動車販売のプロセスが確立されているわけではないでしょうし、いかにエントリーセグメントと言っても安い買い物でも気楽に買えるものでもないので、ご苦労は多いと思いますが。

泉様:いわゆるアフォーダブル、お買い求めいただきやすい適正な価格と言えばいいんでしょうか。それを目指すのですが、現地ではそれなりの家1軒と同じくらいの価格イメージです。消費財ではなく投資対象ですね。たとえば、インドネシアでは政府主導で新しい車両の規格と税制優遇措置が行われています。そのおかげでクルマ市場はずいぶん活性化しています。今回のDATSUNもその規格に準拠したクルマを投入しますから、期待できると思います。また、従来、こうしたエントリーセグメントのクルマの価格帯は130万円くらいからだったのですが、今回DATSUNが投入する「GO」という車種のスタート価格は60万円台からいう画期的な価格を設定し、その点でも市場から注目されているようです。