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ジョージア・軍用道路<往路>「客引き修行」|翻訳者派遣会社が送るエッセイ 未知しるべ

ジョージア・軍用道路<往路>「客引き修行」

翻訳者派遣会社が送る、世界を旅するヤマ・ヨコのエッセイ

未知を求めて世界を旅するヤマ・ヨコのエッセイ。今回は、ジョージアの首都トビリシからカズベキへと連なる軍用道路を行く「旅は道連れ」の体験談をお届けします。

「グルジア軍用道路」を、いざゆかん!

ジョージアの有名観光地カズベキというよりも、「グルジア軍用道路」の名前に惹かれたと言ったほうがいいかもしれない。グルジア軍用道路は、首都トビリシから大コーカサス山脈を越えてカズベキ、さらにはロシアのウラジカフカスへと続く道。帝政ロシア時代に対トルコ戦役の際に軍事利用されたことや、ロシア・チェルケス戦争で大きな役割を果たしたことから、この名がある。濁点に次ぐ濁点の名称は、目にも耳にも重々しく響き、ソ連製のジープが連なる様子が思い浮かぶ。

ロシア国境までわずかに8kmのカズベキを目指し、いざ「グルジア軍用道路」をゆかんと、まずは首都トビリシのディドゥベ駅(これまた濁音の連続!)に隣接するバスターミナルに。カズベキ行きのバスを探していると、タクシーの売り込みがやってくる。

いわく「たったの15ラリで、"5 stops"だ」

その言い値の安さに、つい足を止めると、すかさず男は私と友人とを車に連れていき、埃が積もるバックガラスに指で文字を書き始める。どうやら"5 stops"の中身らしい。有名なアナヌリ教会や展望台にも止まるようだ。仕上げに15 laliと書いて、「どうだ」とばかりに二重線を引く。カズベキまでバスでも10ラリかかる。悪くない提案だ。交渉が成立すると、男は車のもとを離れ、追加客を物色しにいく。15ラリは客が5〜6人揃っての値段らしい。

アジア人女性ハント

客が揃うまで、バスターミナルの横にあるスタンドでコーヒーとパンを食べながら待つことにした。と、先ほどの男が来て、「あれは日本人ではないか」と言う。肩を押され、リュックを背負うアジア人女性2人組(どう見ても、日本人ではない)に英語で声をかけてみる。案の定、彼女たちはフィリピン人で、「バスだったら7ラリよ」と天秤にかけてきた。「でもバスだったらカズベキまで直行だけど、タクシーなら"5 stops"だって」と車に誘導し、バックガラスに指で書かれた文字を示す。

そこへもう1人、今度は日本人らしき女性を発見し、すかさず声をかける。韓国人だったことが判明した彼女に、同じ説明を繰り返すと即OKの返事。結局、フィリピン人2人組も同乗することになり、まさかのアジア人女性5名を積み込んでの出発となった。我ながら客引きの才能があると言わざるを得ない。

「天国に一番近い教会」に願う

「ねえ、あなたの夫はいい人?」

私以外は皆、独身だとわかってから、フィリピン人女性が私に突然尋ねてきた。"Sure"と答え、「だって、彼は今、日本で仕事をしている。私が旅を楽しんでいるこの時に」と続ける。"I enjoy traveling"まで言う前に、"Ah, you traveling"と声がかぶされる。「間違いないわ、私もあなたの夫のような人を探すわ」と彼女は言い、車内は笑いに包まれた。"5 stops"で景色や教会を見て写真を撮り、ガールズトークに花を咲かせ、あっという間に終点のカズベキに着いた。

「グルジア軍用道路」も建設当初は、アジア人女性の侵攻に晒される日が来るとは思っていなかったに違いない。かつては軍馬や軍用ジープが行き交ったであろう大コーカサス山脈を越える道を、無邪気に楽しめる日が続けばいい。カズベキ山をバックに建つ「ツミンダ・サメバ教会」(通称、「天国に一番近い教会」だそう)にそう願った。

ちなみに、元気印のフィリピン人2人組はその日のうちにトビリシにとんぼ返りし、韓国人と私たちは同じゲストハウスに宿泊。村のコンビニ(日用品・食料品なんでもありの店)で買った2リットルのペットボトル入り白ワインで乾杯、同宿のアメリカ人も交え、楽しい夜を過ごした。

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