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キプロス・ニコシア「パスタご飯」|翻訳者派遣会社が送るエッセイ 未知しるべ

キプロス・ニコシア「パスタご飯」

翻訳者派遣会社が送る、世界を旅するヤマ・ヨコのエッセイ

Malta

未知を求めて世界を旅するヤマ・ヨコのエッセイ。今回は、キプロスの首都ニコシアでありついた"金曜日の食卓"をお届けします。

"金曜日の食卓"への招待

朝、出かけに、「今日は何時に戻るのか」と宿のおばちゃんから声をかけられた。特にスケジュールを決めていたわけではなかったので、即答できずにいると、「一緒に夕飯をどうか」と言う。「今日は金曜日だから」と。

金曜日は家族で一緒に食事をする日なのか、詳しいことは知らないが、現地の人の食卓に招かれるチャンスを逃す手はない。「では6時に」と約束して出かけた。

約束の6時に戻って驚いた。宿の外に大きなテーブルが設えられているではないか。いくつかの家から運び出されたと思われる、不揃いなテーブルたちは白い布を被せられ、出っ張ったり引っ込んだりしながら繋げられている。宿のおばちゃんは私の姿を見つけると、手招きし、席に座れと促す。すでに席は、近所の人たちで埋まっている。しかし、周りは見事に男の人たちばかりだ。女の人たちは忙しげに料理を運び、また調理場へと戻っていく。

「私も何か手伝いを」と腰を浮かせると、「いいから、座ってろ」と隣のおじさんが"sit, sit"と言ってくる。キプロスの公用語はギリシャ語だが、英語を話す人も少なくはない。と言っても、観光業でもなく、普通に暮らす人は私以上に片言英語で、ギリシャ語しか話せない人も多い。隣のおじさんもその一人だが、ホスピタリティにあふれ、料理が運ばれてくる度に、その料理名(もちろん現地語)を教えてくれる。おうむ返しにその名を言うと、いかめしい顔で大きく頷く。なんだか言葉をしゃべり始めたばかりの孫と祖父のようだ。

まるで「ゴッドファーザー」のワンシーン

私が孫気分を味わっている間にも、料理は次々と調理場から運び出され、大きな皿やボールが順々と人手を渡っていく。肉じゃがのような煮込み料理や、野菜の煮たもの、豆の煮たもの...。基本的に煮込み料理が多く、男たちだけでテーブルを囲んで、豪快に食べる様子は、「ゴッドファーザー」の映画のワンシーンを想起させる。

なかでも印象に残ったのは、スパゲティーにチーズと黒胡椒をかけただけのもの。大きなアルミボールに入ったスパゲティーを、男たちはフォークで持ち上げ、自分の皿に取り分けていく。麺がくっつき、少々ダマになっているが、そんなことは気にしない。煮込み料理を盛った同じ皿に麺を入れ、交互に口に運ぶ。どうやら、麺は日本のご飯的な存在のようだ。

このシンプルパスタの美味しさにすっかりはまり、自宅でも何度か作っていたのだが、「カチョエペペ」という正式な料理名があり、ローマの名物料理とされていることは、だいぶ後になってから知った。それを知った今でも、あの時のあのパスタを「カチョエペペ」と呼ぶには少なからず抵抗感がある。むしろ「パスタご飯」というほうが、合っているのではないか。おおらかで豪快で温かみのある人たちそのままの味は、今も忘れがたい「キプロスご飯」だ。

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