シックス・アパートが展開するプラットフォームビジネスを聞く
MTはスタンダード
佐藤:企業のWeb担当者のようなある程度知識を持ったユーザーの方には、CMSから最初に連想されるのがMTという認知が広がっていますね。他のCMS製品をご提案すると、「それでMovable Typeとは何が違うのですか」と言われることが増えてきました。ベンダーとしては、「MTで構築します」という説明いらずの提案のほうがはるかに楽です (笑) スタンダードの威力は恐ろしいです。
関様:プラットフォームビジネスを展開する上で、そうした知名度を得ているのはありがたい事です。ブログから発展したことの効果ですね。
佐藤:CMSの市場もずいぶん成熟してきたという印象を持っているのですが、MTの場合、オープンソースをはじめとするさらに安価なパッケージと競合することも多いです。それらのCMSとの差別化は、どういったところがポイントになっているとお考えでしょうか。
関様:お客様とコミュニケーションを取りながら、しっかりサポートさせていただくということになると思います。たとえばオープンソースのプロダクトであれば、セキュリティに何らかの問題があっても「最新バージョンを使ってください」で終わってしまうかもしれません。でも、お客様の事情によっては、過去のバージョンを使い続けなければならないケースがあるわけです。
ですから、私たちは単にセキュリティホールを修正した最新版を提供するだけでなく、以前のバージョンのセキュリティホールを修正するパッチも提供し続けています。こうした対応は多くのユーザーに評価されている点ですね。
大里:アークコミュニケーションズは、シックス・アパートのパートナーネットワーク「ProNet」に参加していますが、ユーザーだけではなくパートナーへの支援も充実していると感じます。オープンソースのCMSを使うかどうかは経営者のフィロソフィー(哲学)が如実に表れる部分だと思うんですね。オープンソースのメリットは多々ありますが、問題が発生したときに最終的に誰が責任を取って対応するのか、どうコミットするのかという部分を明確にするのが難しいです。ベンダーとしては、お客様にご提案する際にこの点がすごく不安になるんです。ですから、お客様にご提案する製品を選定する際は、製品そのものの質ももちろん重視しますが、それと同時に開発元、あるいは販売元が一緒にビジネスをやっていけるところなのかどうか、という点をすごく重視します。その意味で、Movable Typeは非常に魅力的な製品です。第一、関さんとも仲良しですから(笑)
プラットフォームを核にしたエコシステムを構築
佐藤:先ほどアメリカと関わりを持ち続ける重要性やアジアの市場性といった話をうかがいましたが、今のシックス・アパートのビジネスは日本国内のサービスを中心にしていると感じます。プラットフォームの提供という観点で、今後のグローバルの展開をどのように考えていらっしゃるのでしょうか。
関様:シックス・アパートに期待されているのは、誰でも操作できるプラットフォームを作ることです。それがグローバルにつながるのではないかと考えています。
佐藤:実は先日、私たちのWebサイトを44ヶ国語で構築する、というプロジェクトを行いました。Web制作プラス翻訳会社としては、44ヶ国語で翻訳することができることや44ヶ国語のソースが書けることを言葉ではなく実行してみせることがグローバル対応やブランド表現に重要なわけですが、プラットフォームを展開するシックス・アパートとしては、個別の言語に対応することよりもシームレスに使える事が重要なわけですね。
関様:私たちは、あくまでも、ソリューションを開発できる下地を整える、プラットフォームを強化していくという立ち位置でビジネスを進めていきます。何でも自分たちで開発してしまうと、エコシステムが成り立たないと思うんです。エコシステムに参加してもらうためには、「シックス・アパートの領域はここまで」という明確な線引きが必要で、それがないと共存共栄は難しいのではないでしょうか。なので、私たちは下地を強化することに注力します。その上で動作するソリューションについてはぜひ御社をはじめとするパートナー企業の力を借りたいです、今後とも宜しくお願いしますね。
大里:以前からエコシステムのお話はよくうかがっています、その姿勢はずっとぶれていませんよね。本日は長い時間、ありがとうございました。
インタビューを終えて
わずか1時間足らずの対談とは思えないほど、関さんは飄々と中身の濃い話をなさいました。関さんとは、理系→文系→理系→文系と自分の特性を鑑み活躍の場を変遷させているところなど、数々の共通項と不思議な縁で結ばれています。シャンパン王子の異名を取る関さんから、そのうちアークコミュニケーションズに「Movable Typeを使った最多言語でのWebサイト構築」のご褒美として、シャンパンが来ることを楽しみにしています(笑)
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