対談記事

2013年7月

アジアでナンバーワンのビジネススクールを目指して - グロービス経営大学院

プログラムの品質を左右するクリエイティブな英訳

大里:今後、多くの学生さんに世界中から来ていただくためには、英語プログラムの品質管理がとても重要かと思います。この点はどのような対応をしていらっしゃいますか?

中村様:私どもは、「学生の高満足」「100%実務経験を持つ講師陣」「創造と変革」「志(こころざし)」に特徴があります。高満足とは学生さんたちの満足度です。プログラムに満足できなかった学生さんに返金するサービス保証制度があるのはグロービスだけです。それほどにプログラムの品質には気を使っています。学生さんたちには講師の評価もしてもらいます。実務経験がしっかりとあり、教えることに情熱を持てる方でないと、講師には採用されません。創造と変革とは、ゼロから事業を起こしたり、大企業を変革したりすることです。志とは、一人一人の学生の生きる目標を見いだすことです。

佐藤:特に日本の良さを伝えることをメリットにしたいということであれば、ユニークさ、特殊性をアピールすることも重要になると思います。その意味で教材のクオリティも同様に問われると思います。英語の教材制作はどのようなことに一番、気を使っていらっしゃいますか?

田岡様:日本のケース(企業事例)を扱うことにこだわっています。日本企業が現地に行って苦労したケースを取り上げるなど、日本の学校ならではの特長を打ち出しています。それこそが日本で学ぶことを意識しているポイントです。この中には、日本やアジア独特の考え方などがあり、これを理解してもらうために、英語の品質はとても重要であり、神経を使っています。日本人の学生に英語プログラムを提供しているときはグラマーがしっかりしていれば通用しました。しかし、いろいろな国の方に品質の高いプログラムを提供するためには、よりナチュラルで相手に訴える英語が必要になりました。言い換えれば、論理構成のしっかりしたクリエイティブな英語が求められるようになったのです。アークさんにも翻訳では、ご協力をいただいていますね。ありがとうございます。

大里:はい。従来より和訳のお手伝いをさせていただいておりましたが、英訳もお手伝いさせていただくようになりました。お役に立てて光栄です。

日本人にも海外からの学生さんにも日本で学ぶことの意義を伝えたい

佐藤:先ほど、アジアの若い人たちが日本に来て積極的に学ぼうとする姿勢についてうかがいました。これから伸びていこうとする国の活力を痛感するお話でした。では、グロービスさんとして、日本の若い人たちに対してのグローバル教育はどのように考えていらっしゃいますか。今後、日本人のグローバルリーダーを育てることも御社の使命かと思います。

中村様:たしかに日本人の教育は大きな課題です。日本語のMBAプログラムを選択している学生さんも、3分の1は英語プログラムを取ることができる制度を採用しています。ただし、英語力の審査はあります。

田岡様:グローバルで通用するには、言語能力に加えて論理構成力が要求されると思います。いろいろな国の方とお話をしていると、話す順序やアピールの仕方がさまざまなんですよね。グロービスでも、クリティカル・シンキングというプログラムが人気なのですが、その力がまさにグローバル社会での理解力そのものだと思います。

中村様:グロービスでは、グローバルリーダーに求められる能力を6つ挙げています。「ビジネススキル」「コンセプチュアルスキル」「ヒューマンスキル」「英語力」「グローバルパースペクティブ」「異文化対応力」の6つです。前半の3つは、国内・グローバルに問わず、リーダーに求められる能力です。後半の3つは、グローバルで活躍するに当たって求められる能力です。

佐藤:日本の学生がアメリカに留学することには大きな意味があると思いますが、今回お話を伺った全日制の英語MBAプログラムで学ぶということも大いに視野に入れてほしいですね。特に、社会に出たあとでもう一度学びたいという意欲のある人にとって、このプログラムは魅力的でしょう。

中村様:まったくその通りです。堀も私もハーバードで学びました。大里さんはケロッグでしたね。どちらも素晴らしい学校です。しかし、時代は変わりました。家庭の事情や卒業後の環境、時間などを考慮すれば、日本でMBAを取得することのメリットをもっと評価していただきたいですね。将来的には、英語プログラムにも20~30%の日本人に参加していただきたいと思います。

大里:お話の通り、私はケロッグでMBAを取りましたが、在学中、アメリカでのビジネスばかり教えられて、日本で役に立つのかと不安に感じたこともありました。実際に日本や中国で仕事をした際になかなかビジネススクールで学んだことを活かせない、と感じたこともあります。卒業後に活躍する環境に近い日本で学べるのは、アジアの人にとっても日本人にとっても、非常に恵まれたことだと思います。グロービスさんには、もっとその良さをアピールして、ご活躍いただきたいです。

中村様:今、海外からの学生さんたちと一緒に陽明学を勉強していますが、英訳するのがとても難しくて楽しい(笑)! 中国語、日本語、英語を交えて格闘することが学生たちの興味を喚起しています。

田岡様:4つの特徴の中に挙げた「志」も東洋的な考え方であり、とても新鮮に映るようです。「いつか達成したい目標を持つ」「どんな人間になりたいか考える」など、ビジネスの枠を超えた日本的な心を学ぶ喜びをもっと伝えていきたいと思います。

大里:お話を伺っていて、日本流の良き経営メソッドをグローバルで通用させるための熱意、そしてグロービスさんがお持ちのグローバル人材育成のノウハウに、勇気と希望をいただきました。アジアを舞台にしたグローバルリーダー育成に期待させていただきます。今日は楽しいお話をありがとうございました。