私の英語学習法

2015年10月

このコーナーでは、プロの翻訳者として活躍中の方々を中心に、ご自身が経験してきた語学の学習方法や工夫、ノウハウ、また現在も語学力を維持するために行っていることなどをご紹介しています。

第7回:語学学習成功は目標設定能力?(SSさん)
第6回:段階に合ったやり方で(umeさん)
第5回:鍵は多面的アプローチ(Y. I.さん)
第4回:私の英語とのつきあい方-時間が味方(YBさん)
第3回:「精読」と「多読」をバランスよく(S.T.さん)
第2回:英語の大海で漂流しないために、自分の羅針盤を持つ(SAKURAさん)
第1回:自分の専門分野でバイリンガルを目指す(Tedさん)

第5回:鍵は多面的アプローチ

私は海外で生活をした経験もなければ、身近に外国語の話し手がいたこともなく、ごく一般的な日本の環境の中で過ごしてきました。そのため、何か特別な体験から発見した語学習得の秘訣をお話しすることはできません。また、そのような秘訣をアドバイスするのは自分の役割ではないと思いますので、別の観点から考えてみたいと思います。それは母国にいながら外国語を学ぶ際に気をつけるべき点は何かということです。

語学の難しさは、さまざまな方面からアプローチしなければならない点にあると考えます。例えば、語学学習には「聞く」、「話す」、「読む」、「書く」という四つの領域があります。おそらく、そのどれも同程度に得意だという人はまずいないのではないでしょうか。誰もがある領域を得意とする一方で他の領域を不得意とし、当然ながら得意なところは一生懸命勉強しますが、不得意な方はあまり熱が入らないものです。

しかし、長年語学を学んでいて感じることは、この四つの能力をバランスよく向上させることが非常に重要だということです。一つだけを上達させようとすると、どうしても限界に突き当たる気がします。語学の習得においては、他の領域の能力が向上したことによる波及効果が想像以上に大きいように思うのです。通訳を目指す人は「聞く」「話す」に、英日翻訳者は外国語を「読む」ことに、日英翻訳者は外国語を「書く」ことに重点を置きがちですが、それがかえって回り道になっているのかもしれません。

また個々の領域、例えば「読む」ということ一つを取ってみても、精読と多読というまったく正反対のアプローチがあります。ここでもやはり、精読を好む人と多読を好む人に分かれるように思います。精読派はきちょうめんな人が多く、何ごとも徹底して調べ、分からないところをそのままにはしておけないという性格の人が多いでしょうし、そのような人にとって、多読は何かいい加減な方法と感じられ、気が進まないのではないかと思います。逆に多読派にとっては、精読は膨大な時間を要するうんざりするような方法と感じられたり、無意味なこだわりと思われたりするのかもしれません。

しかし、語学力を高めるためには、やはり両方のアプローチが必要だと私は感じています。多読だけでも精読だけでも効果は薄く、両面をバランスよく取り入れることによって、想像以上の効果が望めるのではないかと思えるのです。

自らの性格に逆らって、苦手な領域の学習や自分の好まない学習方法を意識的に取り入れることが語学習得の鍵となるのではないでしょうか。母国語の場合は、あるいは海外で生活している場合は、嫌でもさまざまな面から学ばなければなりません。半ば強制的にそうせざるを得ない状況に追い込まれるわけです。しかし、日本の環境にいて外国語を学ぶ人には、そのような強制はなかなかありません。そのため、自分で意識的に作っていかなければならないのだと思います。現在ではさまざまな語学教材があり、教材以外でもインターネット上の動画や文献を通じて多様な方法で外国語に触れることができます。しかしそれだけに、自分の好みのアプローチのみに偏ってしまう危険性も大きいように思います。

自ら英語を勉強し始めたきっかけは?

外国語で書かれた書物を自由に読めるようになりたいと思い、いくつかの言語を学びました。初級者段階でとどまっている言語もあります。英語はとっつきやすいですが、マスターするのは非常に難しいという印象です。

プロフィール
  • 名前:Y. I.
  • 職種:翻訳者
  • 出身:東京都
  • 趣味:バイオリン(数年前から始めた初心者です)とピアノ(数十年弾いています)
  • 海外経験:なし