私の英語学習法

2015年9月

このコーナーでは、プロの翻訳者として活躍中の方々を中心に、ご自身が経験してきた語学の学習方法や工夫、ノウハウ、また現在も語学力を維持するために行っていることなどをご紹介しています。

第7回:語学学習成功は目標設定能力?(SSさん)
第6回:段階に合ったやり方で(umeさん)
第5回:鍵は多面的アプローチ(Y. I.さん)
第4回:私の英語とのつきあい方-時間が味方(YBさん)
第3回:「精読」と「多読」をバランスよく(S.T.さん)
第2回:英語の大海で漂流しないために、自分の羅針盤を持つ(SAKURAさん)
第1回:自分の専門分野でバイリンガルを目指す(Tedさん)

第4回:私の英語とのつきあい方-時間が味方

はじめに

今では英日技術翻訳者として生計を立てている私ですが、学生時代の英語のテストや、勤め人時代の仕事上の必要といった「外圧」が推進力になって、試行錯誤するうちに自分に適した参考書や学習方法を見つけてきたような気がします。以下では、「学習」だという意識があったウン十年前の時代と、翻訳を生業として、仕事を続けてゆくために英語と「つきあっている」今の時代について、私の英語との関わり方を振り返りたいと思います。

自分に適した学び方

就職した会社で「英会話」ができないと仕事が成り立たない状況になり、NHKラジオのビジネス英語を始めました。受験英語ではまったく実務の役に立たず、日本語でのコミュニケーションはさえない同僚が、ゆったりとした不思議なリズムの英語でしゃべっていたり、イタリア人のブロークンでなまりの強い英語でも完全にコミュニケーションが成り立っていたりしました。そうした実例を見て、テレビで見るアメリカ英語を話す人たちのように、かっこよくしゃべる必要などないのが実社会なのだと、不思議な気がしたのをよく覚えています。当時の私には、読むよりも話すことの難易度が高かったのですが、そのうちに、仕事の会話に出てくる語彙や表現をビジネス英語のテキストなどで目から入れ、辞書や文法書を使って細かく意味を調べておくことで、仕事で耳から英語が入ったときに理解できるようにする、という学習の流れができました。会話ができないから会話を習いに行く、というのではなく、ある程度慣れていた目からの「勉強」で、不得意な「耳」と「口」を補う、というスタイルでした。同時に、時間が許す限り、仕事で扱う英文資料や技術資料を読んで理解することが、実用的な英語力を得る助けになりました。語学力を知識で補う、という戦略です。弱点を解消することを目指さず、強みで補うなかで弱点も目立たなくなって行きました。

日常の仕事で、あまり英語で苦労しなくなってからは、通勤時間中はエンターテインメント系のペーパーバックを読むようになりました。元々かなりの読書好きでしたが、それなりに読めるようになり、分からない単語があっても辞書を使わず英語で好みの分野のものを読むようにしているうちに、読む力がさらに伸びたように思います。ただし、「伸びたな」と思えるようになったのは10年近くたってからで、「読解力」は継続が大事なのでしょう。