第3回:「精読」と「多読」をバランスよく
情報収集力を高める「多読」アプローチ
翻訳作業では、原文に書かれた事実の裏取りや背景状況の理解のために、念入りかつ迅速な情報収集が欠かせません。情報収集力の強化には多読アプローチで取り組んでいます。
多読では一般的に、(1) なるべく辞書を引かない、(2) 分からないところにこだわらない、(3) 好きな題材を選ぶことが推奨されます。辞書がなくても大体意味が取れるような易しい英語にたくさん触れ、楽しみながらだんだん難易度を上げることにより、自然に英文の構成や単語のニュアンスが分かるようになって読むスピードも上がるという学習法です。私の場合、どうも理解不足のままスピードを上げて読むことが苦手で、このアプローチをなかなか生かすことができませんでした。しかし現在は仕事で大量の英文を読む機会を活用して、情報収集の精度とスピードの向上を図っています。
多読の出発点として、個人的に最もハードルが低かったジャンルは時事英語(ニュース記事)です。その理由としては、比較的短くまとまっていること、一般向けで定型的な英語が使われていること、関連する写真や動画が提供される場合が多いこと、類似記事を比較できることなどが挙げられます。最近ではサッカー女子ワールドカップの記事が良い例かもしれません。「なでしこジャパン」の活躍を日本のニュースでチェックしたうえで米国や英国のニュースサイトの記事を読んでみると、英語のフレーズとリンクするようにプレーの1コマや選手たちの表情が脳裏に浮かんできて、単に活字を追うだけのリーディングとはスピード感や理解度が違うことが実感できました。このように、興味のある分野やすでに精読した文章などを活用し、英語を英語のままスピードを上げて読み進む感覚を養うようにしています。
理想の翻訳者への道のりはまだまだ遠いですが、日々の積み重ねで一歩ずつ近づけるものと信じて努力を続けていこうと思います。
自ら英語を勉強し始めたきっかけは?
大学時代、映画でジョーク部分の字幕翻訳が実際のセリフとまったく違うことに気づき、本当は何と言っているのだろう?と興味を持ちました。翻訳の面白さを知ったきっかけでもあります。
プロフィール
- 名前:S.T.
- 職種:翻訳者
- 出身:愛知県
- 趣味:パン作り
- 海外経験:アメリカ(語学研修3カ月)
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第3回:「精読」と「多読」をバランスよく(S.T.さん)