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対談記事
2024/07/04

変貌するTBSグループが統合報告書に注力する理由

  • 翻訳・通訳

変貌するTBSグループが統合報告書に注力する理由

約70年前にラジオ局として誕生したTBSは今、その姿を大きく変えようとしています。「放送局からコンテンツグループへ」と変貌する姿を克明に記録し、価値創造ストーリーの開示を担う統合報告書。TBSグループは統合報告書に早くから着目し、放送業界では先陣を切って2021年に第一号を発行しました。同時に英語版にも取り組み、国内だけではなくグローバルなステークホルダーへの情報開示を進めています。第一号発行から統合報告書編集の責任者として携わり、2024年版の第四号でも編集長を務める、同社サステナビリティ創造センターの赤阪徳浩様に、放送・コンテンツ業界における統合報告書の意義や発行までの苦労、今後の展開などについて聞きました。

対談,アークコミュニケーションズ,TBSホールディングス様

左より大里、赤阪徳浩様、大西、馬場

プロフィール
赤阪 徳浩  TBSホールディングス 「TBSグループ統合報告書2024」編集長
大里 真理子 株式会社アークコミュニケーションズ 代表取締役
馬場 浩昭  株式会社アークコミュニケーションズ 翻訳事業部長
大西 由莉  株式会社アークコミュニケーションズ 翻訳プロジェクトマネージャー

「放送局」を超え、「コンテンツグループ」へと変革を進める

大里:TBSといえば「ドラマのTBS」というフレーズがすぐに思いつくくらい、放送事業のイメージがあります。そのTBSグループがいま大きく変わろうとしているとお聞きしました。TBSで現在、何が起こっているのか、まずは全体的な観点からお聞かせ願えますでしょうか。

赤阪様:TBSグループはいま、「トランスフォームの真っ最中」です。1951年にラジオ局として産声を上げ、4年後にテレビ本放送を開始して70年あまりが経ちましたが、長期ビジョン「TBSグループVISION2030」を策定、「東京を超えろ。放送を超えろ。」をスローガンに、コンテンツグループとして生まれ変わろうとしています。ドラマやバラエティー、報道・情報、その他の放送事業はもちろんのこと、海外配信を前提としたコンテンツサプライ、不動産やライフスタイル、学習塾など各事業にも自社のコンテンツ力をかけ合わせて価値創造と持続的成長を目指しています。

当社のブランドプロミスは、「最高の"時"で、明日の世界をつくる。」です。 最高の"時"とは、世界の人々にわたしたちのコンテンツやサービスに触れていただくことでよき時が積み重なり、それによって明日の世界に貢献したいという願いであり、約束です。グループには現在およそ8000人の従業員がいますが、その全員が、放送で培ってきたコンテンツ力を基礎としながらも、放送という枠組みを超えてコンテンツグループに生まれ変わろうと意識変革をしている最中、それが2024年現在の姿だと思っています。

さらに当社は有限希少の国民の電波をお預かりする放送局としての「社会的使命」を負っています。今年元日の能登半島地震の際の報道では、発生後9時間に及び特別番組を放送し続けましたが、災害その他の局面で、国民の生命・暮らしを守るための情報を伝え続ける義務があることをしっかりと自覚し、「情報ライフライン」としての機能も果たすべく日々備えています。こうした社会的使命は、国内に限らず海外の戦争・紛争なども積極的に伝え、公正な社会・世界を維持するために情報・コンテンツで貢献しようともしています。

存在意義を知っていただくために選択した「統合報告書」の発行

大里:放送業界ではかなり早い時期に統合報告書を発行されたとお聞きしています。放送局として積極的に統合報告書作りに取り組んだ理由は何だったのでしょうか。

赤阪様:元々は、当社の財務戦略責任者(当時の代表取締役)が、「投資家・株主の皆様とコミュニケーションを取る上で統合報告書が必須」と提言したところからプロジェクトがスタートしました。対話ツールとして体系的・具体的かつ統合的にグループに情報を記載した報告書がないと、当社の価値や価値向上のための取り組みが伝わりにくいと考えたのです。投資家・株主の皆様のみならず、すべてのステークホルダーに向けて、TBSグループの存在意義を知っていただきたいという望みもあったといいます。

大里:同じ業界の中で前例が乏しい中、ゼロから1を生み出すのは大変なご苦労だったと思うのですが、どのようにして発行に至ったのでしょうか。

赤阪様:私は、入社2年目から長年報道局に在籍し、主にニュース・ドキュメンタリー番組を制作してきました、そこでの経験が活きた気がします。報道は、取材を通じて視聴者に情報を伝える仕事なので、常々「観察と分析と表現の三つが大事」と肝に銘じていましたし、後輩たちにもそう伝えていました。観察がしっかりしていなければ事象を把握できません。分析がしっかりしていなければ体系的な理解ができません。そして、事象を偏り無く適切に伝えるためには表現を磨く必要がある。この三つの作業「観察・分析・表現」はどの一つも欠くわけにいきません。

TBSの統合報告書を編集せよと言われたのは、私が財務戦略部というセクションに異動して間もなくの頃です。報道の経験はあるものの、財務スペシャリストとは口が裂けても自称できない、しかも統合報告書という言葉も初めて聞いたに等しい私としては、そのミッションにかなり戸惑ったというのが本当のところです。しかし考えてみれば、統合報告書といえども「観察と分析と表現」で作れるのでは?そう思ったとき、仲間と共に編集作業に取り組む道筋が見えた気がしました。会社の競争優位性や知っていただきたいことを、すべてのステークホルダーに理解していただくために、自社を「取材対象」にして、あたかも特番を制作するように取り組んでみようと。当初、かなりの苦労が伴ったことは否めませんが、試行錯誤の末、2021年にようやく第一号を発行できました。

大里:会社の経営実態を報告する目的だけならば、財務報告関連のドキュメントでも事足りるという考え方もあるかと思います。なぜ、苦労して統合報告書を作られたのでしょうか。

赤阪様:個人的な理解なので完全に正しいか自信はないのですが、会社を人に例えれば、決算報告などの財務関連情報"のみ"の開示は、その人の銀行残高と家計簿だけを公開するようなものではないでしょうか。では、仮にその人を信用して、お金を渡して稼いでもらおうか、という場合、通帳と家計簿で十分でしょうか?その人の"人となり"は?性格は?どんな暮らしをしてるの?健康状態は?と、知りたい情報は多岐にわたります。会社も同じことではないかと思います。投資の前提となる情報を、財務・非財務両面で過不足なく、しかも統合的に記述する統合報告書の重要性は増してきていると考えています。

変貌するTBSグループが統合報告書に注力する理由

「総合」報告書ではダメ 「統合」報告書をつくろう

大里:実際にどのようなプロセスで統合報告書を開発したのかお教えください。また、その中で何か学びのようなものはありましたでしょうか。

対談,アークコミュニケーションズ,TBSホールディングス様

赤阪様:初年度は、8人ほどのチームで立ち上げました。二年目は16人、三年目は24人、四年目、つまり現在ですが、およそ30人が編集作業に関わっています。全員が他に主務を持った兼務者、つまり社内・グループ内の持ち場から情報を持ち寄れるエキスパートたちです。メンバーは「統合報告書って何?どんな報告書がいい報告書?」という摸索から始めましたが、「報告したいが報告すべき事がない!」ということもしばしばでした。一例を挙げますと、統合報告書ではその社の重要課題=マテリアリティを解説することが求められますが、第一号発行当時、TBSグループにはそれがありませんでした。そのような「欠けたる所が見つかること」は統合報告書編集のメリットの一つです。マテリアリティという経営課題をきちんと設定しようという気運が高まり、経営陣の議論を経て、2022年発行の第二号からは、マテリアリティを記載しています。

"長期ビジョン"を設定したなら、その実現のためには"戦略"が必要になり、戦略に基づいて"戦術"を構築する必要が、そしてその戦術をどうとるかの"数値目標(KPI)"が必要となります。会社のビジネスがどのくらい体系的に組み立てられているか、統合報告書に求められるのはそうした記述ですが、そのための「統合思考」が社内に芽生え、育ったなという実感があります。

馬場:編集作業に対し、社内でネガティブな声などはなかったのですか?

赤阪様:目に見え、肌に感じる逆風というのはありませんでした。一号目が完成した当時は、それを読んだ経営陣から、「へえ、こうだったんだ」「僕らも知らないことがいっぱいあった」というポジティブな感想が聞かれたくらいです。統合報告書の編集が、いわば「会社の自己診断」的な機能を果たして、対外開示だけでなく、自社を客観視する機会になったかな、と手応えを感じました。

社内だけではありません。TBSグループ各社で働きたいとエントリーしてくれる新卒の学生さん、そしてキャリア入社を望まれる社会人の方達は、必ずといって良いほど、統合報告書を熟読してくれているそうです。TBSの競争優位性や価値、目指す方向に超える必要のある課題を理解するツールとして活用してもらっていることは嬉しいことですし、統合報告書を熟読した末、当社を選んだという方は、非常に強力な戦力としてなってもらえるなと期待できます。

編集チームの会議では、しばしば、「統合ならぬ"総合"報告書は作らないようにしような」と呼びかけています。編集メンバーが、自分の所属する部署の利益代表となり、各部署のアピールばかりが羅列された「総合カタログ」めいた報告書では何も伝わらないという意味です。統合報告書はあくまで、グループの存在意義や価値、競争優位性と課題を統合的に示し、一本の「価値創造ストーリー」を通じて理解していただくためのものだということを忘れないように努めています。

「観察・分析・表現」それを翻訳でも

馬場:貴社は第一号から統合報告書の英語版も発行されていますね。一般には、まず日本語から始め、次に英語版を作る企業が多い中、最初から英語版を意識されたのはどういう理由からでしょうか。

赤阪様:英語版を作ることは第一号の発行時からの大前提です。コンサルとして伴走してくださっている野村インベスター・リレーションズとの議論でも、TBSがグローバル戦略を打ち出しているなら英語版は必須、と早々に決まりました。認定放送持株会社である当社は、制度上海外資本比率の制限があるため、「英語版の重要度はやや落ちるのでは?」という意見もありました。しかし、今後グローバルに打って出ようとするなら、海外の事業パートナーをはじめ、出来るだけ多くのステークホルダーにTBSグループという存在を英語でもしっかり開示することは、ビジネス上も大きなメリットがあるという判断でした。

馬場:そんな中で翻訳会社に当社を選んでいただきましたが、アークコミュニケーションズの翻訳のどのようなところが貴社のご意向に沿えたのかお教えいただけますでしょうか。

赤阪様:アークコミュニケーションズに翻訳を依頼したのは2023年版、第三号からでした。以前の号の翻訳を社内のネイティブに読んでもらった際、いくつか指摘を受けた英語表現もあったため、出来上がった日本語版を翻訳して、というシンプルな作業からもう一歩踏み込んで、翻訳者との対話、議論をしながら英語版を作りたいと希望して、それが可能な会社ということで御社にお願いすることになったのです。

馬場:それは本当にありがとうございます。翻訳のどのようなところにご苦労なされたのでしょうか。

赤阪様:当社のブランドプロミス「最高の"時"で、明日の世界をつくる」は、英語表記では「From each moment, a better tomorrow」としています。プロミス策定時に、ネイティブの人と議論し、日本語の直訳では伝わりにくいため、メッセージの意図がストレートに伝わるように「From each moment...」としたわけですが、キーワードとして「最高の"時"」だけを単体で切り出して文章の中で使ったとき、その翻訳が「each moment」でいいかというと、意味が違ってきますね。では、当社のブランドプロミスの意味を理解した上で、別の言葉で「最高の"時"」を英語でどう言えばいいのか、これは単語を翻訳機にかけただけでは決して適切な言葉にはなりません。そこには翻訳者と当社による「観察・分析・表現」の共同作業が必要になるわけです。

大里:アークコミュニケーションズのミッションステートメントは「お客様の思いや本質を、わかりやすく世界に伝える」こと。そうしたわたしたちのミッションステートメントを実現できる、お客様の想いや本質が詰まっている統合報告書の翻訳は、まさにその真骨頂だと思っています。現場では上手く「言葉のキャッチボール」ができていますでしょうか?

赤阪様:はい。初めからネイティブの方が翻訳するのが御社の持ち味、と聞いていましたが、出来上がった翻訳に当社内のネイティブや英語使いたちも「異論を挟む余地がない」と申しています。統合報告書では当社が独自に作った言葉や専門用語、つまりTBS特有の"造語"もしばしば使われますが、それを英語に翻訳した言葉など、どんな辞書にも載っていません。新たな英語表現を共に「生み出してゆく」、そんなご苦労を御社におかけすることになるかと思っています。

大西:いいえ、むしろ御社と一緒に新しい言葉・翻訳を作っていけることを楽しみにしています。会社の背景を十分理解した上で、新しい表現をこれからも作っていきたいと思います。

「変わりゆくTBSの姿」を英語で世界に伝える

大里:今年の統合報告書では、何か新しい展開を考えていらっしゃるのでしょうか。

赤阪様:2024年は、新たな中期経営計画が発表され、ボードメンバーも交代しましたので、2024年版の統合報告書第四号では、経営の全体像についての記述を相当刷新する必要があります。加えて、芸能事務所で起きた事案に端を発したビジネスと人権についての問題に社会の注目が高まる中、TBSがメディアとしてどのように対応し、態勢を整備しているのかを誠実にご報告するという義務もあります。

大里:英語版に関してはいかがでしょうか。

赤阪様:2023年にTBSにはグローバルビジネス局という部署ができました。これからは、放送コンテンツを海外に売りに行くだけではなく、コンテンツサプライヤーとしてのTBSが、海外のプロダクションやスタジオとパートナーシップを組んで共同制作していくビジネスモデルをとっていくことになります。放送で培ったコンテンツ力を世界規模で発揮してグローバルなビジネスを展開する「元年」だと、新しい中期経営計画では宣明しているのです。当社がいかに世界に打って出て、そこで勝てるか、その戦略や進捗を、英語版でしっかりと示す必要があります。

東京の放送局=TBSとして生まれた当社ですが、先年の商号変更を経て、「東京放送」と名乗ることはもうありません。東京を超え、放送を超え、世界にコンテンツを通じて「最高の"時"」を届けるグループに。冒頭にも申し上げたトランスフォームの決意を、英語ネイティブの読者の方々にもしっかり伝えたいと考えています。翻訳面でも色々とお手数をおかけすることになると思いますが、今後ともよき協働をお願いします。

大里:ご期待に沿えるよう頑張ります。本日は貴重なお時間をありがとうございました。

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