2016年1月
このコーナーでは、プロの翻訳者として活躍中の方々を中心に、ご自身が経験してきた語学の学習方法や工夫、ノウハウ、また現在も語学力を維持するために行っていることなどをご紹介しています。
第7回:語学学習成功は目標設定能力?(SSさん)
第6回:段階に合ったやり方で(umeさん)
第5回:鍵は多面的アプローチ(Y. I.さん)
第4回:私の英語とのつきあい方-時間が味方(YBさん)
第3回:「精読」と「多読」をバランスよく(S.T.さん)
第2回:英語の大海で漂流しないために、自分の羅針盤を持つ(SAKURAさん)
第1回:自分の専門分野でバイリンガルを目指す(Tedさん)
第6回:段階に合ったやり方で
私が外国語に興味を持ったのは、具体的に思い出せないくらい小さい頃からのように思います。「大きくなったら自分は外国語をペラペラになっている」と思い込んでいました。ただ、興味の対象が語学だけではなく幅広かったので、様々なことをしつつ、ときどき語学の習いごとに通ったり、テレビの語学講座で覚えたフレーズや歌を友達の前で披露したりしていました。
本格的に語学を身に付けようと思ったのは、社会人になって最初の仕事を辞めた後です。ちょうどその頃に尊敬していた海外の著名人にお会いするという機会に恵まれたのですが、"Thank you!"を連呼することしかできなかったということがありました。「次にこういう機会があったら、もう少しマシなコミュニケーションが取れる人になっていたい」と思ったことをきっかけに、留学費用の貯金と独学での勉強を始めました。最初はフレーズの丸暗記で、耳と口と手で覚えました。反射的に口をついて出てくるフレーズが増えていくことが嬉しかったです。丸暗記は、文法の理解にも役立ちました。身近な方法ながら、日記を書いたり、留学や旅行関係の資料を読んだりして読み書きの割合も徐々に増やしていきました。
その後実際に留学しましたが、ネイティブのスピードに慣れて、新聞をなんとなく読み通せる段階にたどり着くまでは四苦八苦しました。ただ、嫌にはなりませんでした。おそらく子供の頃からの「そのうちペラペラになる」という思い込みのおかげのように思いますし、「いま流暢な人も、きっとこんな時期を経ているはず」とも思っていました。また、友達に恵まれたことも大きかったです。ネイティブや日本人以外にも、いろいろな国から来ていた人達と大笑いしたり、悩みを相談しあったり、お互いの国の食や文化に興味を持ったりなど、言葉を超えた部分での交流も有り難かったです。
日本に戻ってからは、外資系企業で語学を活かした仕事に就きました。以降、経験してきた業種は多岐に渡りますが、その中で徐々に翻訳にシフトしてきました。翻訳の学校に通ったことはありませんが、留学中や日本に戻ってから翻訳者の方々と知り合い、仕事を身近で見させて頂けたことが今も大切な財産となっています。「できる人ほどフットワークが軽くて、すぐに辞書もひくんだな」と感心していたことが、今の自分に大きく影響していると思います。
勉強法はその時々で変化してきていますが、今はニュースを観たり、ラジオを聴いたり、気になった記事や本などを読んだりしています。読む際には、ときどき独り言のように音読もしたりしています。気になる言葉や表現と出会ったときには、メモを取ったり可能な限り調べたりするよう心掛けています。一度で覚えられるかは別として、次に出会ったとき「前にも調べたような気がする」と思うだけでも大きな前進、と思うようにしています。
語学の習得に終わりがあるわけではありませんが、語学は老後のボケ防止に効果があるようにも思っているので、逆に長期的な楽しみでもあります。ちなみに、"Thank you!"しか言えなかったことが本格的に語学の習得を志したきっかけと最初に書きましたが、あれこれ表現を駆使するよりも"Thank you!"が感動を伝える最善の言葉だったのでは、と今は思っています。
プロフィール
- 名前:ume
- 職種:翻訳
- 出身:岩手県
- 趣味:神社・温泉めぐり
- 海外経験:アイルランド(3年)