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中国語の豆知識 第4回:日本と中国の「漢字」の違い
前回は「書き言葉」と「話し言葉」の違いをお話しましたが、今回は中国語を日本語との関係で考えてみたいと思います。
【日本と中国に共通する「漢字」】
日本語と中国語は、非常に洗練された「漢字」という文字体系を使っている点で共通しています。
実際に使われている文字の数は、日本語より中国語の方が圧倒的に多いものの、日中双方で使われている漢字全体のうち、7割から8割は同じ意味で使われています。
その中でも今回は敢えて少ないほうの、共通しない2、3割の漢字に注目してみましょう。【同じようで違う漢字】
中国語圏に旅行しようとした時、「中国語はできないけれども『筆談』をすれば何とかなるのでは?」と考えたことはありませんか?
確かに旅先で簡単な意思疎通をしようと思えば、筆談でもある程度事が足りてしまうかもしれません。
ただ先ほどお話したように、日本と中国では共通しない漢字が2割から3割はあるのです。文字の意味が日本とは違うこともあるとは知らずに、ただ漢字を書きならべるとどうなるでしょう。単に意味が通じないだけでなく、場合によっては誤解を招いてしまうこともありますので、そういったリスクがあることを、ぜひ承知しておきたいものです。【我孫子 = 地名?】
以前、日本に留学していたある中国人の学生が言っていました。「私は今変な地名のところに住んでいます。」と。「どこ?」と尋ねると「我孫子(あびこ)」という答えが。日本人にとっては単なる地名、固有名詞でしかありませんが、中国語のネイティブがこの三文字を中国語の発音で認識すると「私の孫」という普通の表現になっているそうです。漢文が得意な人で「自~」が「~から」だと知っている人が筆談で「我来自我孫子」と書いたとすると、はたして意図したように意味が通じるかどうか・・・【日中で意味の違う漢字の例】
基本的な文字で、日中で意味の違う字の例をあげると、たとえば次のようなものがあります。例) [日本語] [中国語での意味] ちなみに中国語では… 汽車 自動車 「汽車」は「火車」 聞 嗅ぐ 「聞く」は「听」(簡体字)/「聴」(繁体字) 結構 構造、構成 「けっこう」は「相当」 我慢 私は遅い(主語+述語) 「がまん」は「忍耐」 プロの翻訳者や通訳者がこの辺の事を間違えることはあり得ませんが、話のタネに知っておくと面白いかもしれません。
【独自に変化していく言語】
同じ言語を話すひとつの民族が何らかの理由でふたつに分かれ、その後お互いの交流が無くなると、それぞれの言語は必ず違う方向に変化をしていくといいます。大昔にあった印欧語族の祖語は、それぞれ現在のインドやヨーロッパの諸言語に変化しています。また、中国各地の方言が生まれたのもこの様な理由が発端だったのかもしれません。
すこし大きい話になりましたが、日本と中国の「漢字」の違いについても同じようなことがいえるでしょう。
中国で生まれた漢字は、日本や朝鮮半島にも伝わり、独自の変化発展を見せています。その中には「朝鮮で生まれた漢字」や「日本で生まれた漢字」などがありますが、次回はこの後者「日本で生まれた漢字」についてご紹介したいと思います。どうぞお楽しみに!担当: 翻訳事業部 伊藤
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バックナンバー
- 中国語の豆知識 第4回:日本と中国の「漢字」の違い(2011年冬号)
- 中国語の豆知識 第3回:「書き言葉」と「話し言葉」の違い[英語版](2011年夏号)
- 中国語の豆知識 第2回:ふたつの流派がある中国の文字[英語版](2011年春号)
- 中国語の豆知識 第1回:中国語の多様性[英語版](2010年冬号)