お問い合わせ

Close

お問い合わせ
お問い合わせ
アークコミュニケーションズのビジネスの今を伝えるfunNOTE
Column
2017/07/11

英語の豆知識 第六回: 英語にもある強みと弱み

英語の豆知識 第六回: 英語にもある強みと弱み

皆さんは「ピジン言語」という言葉を聞いたことがありますか。

ピジン言語とは、言葉が通じない二つ以上のグループ間で意思疎通を図ろうとする中から生まれた簡易的なコミュニケーション手段です。お互いの言語を混ぜながら、あるいはいずれかの言語の文法や語彙を簡略化して意思を通じさせる方法です。

商人たちが言葉の通じない国と海外貿易する場合や、戦乱から逃れた異なる民族同士がコミュニケーションを図ろうとする場合、また植民地化された国の人が宗主国の人と意思疎通を図る場合などに発達したといわれています。お互い母語が異なるので、発音は話者の母語の影響を強く受けています。

ピジン言語は、共通言語がない中でコミュニケーションをとることが急務な状況下で、人々が工夫をしながら自然発生的に作り上げてきた簡易的言語です。そのため誰かがそれを母語として使用しているということはなく、自然言語に比べて「ブロークン(broken)」な形態なため、卑下した目で見られがちです。それでも、誤解のないコミュニケーションを図るためには、ピジンなりの語彙や文法ルールを習得する必要があります。

ピジン言語を話す親から生まれた子供は、親からピジン言語を受け継ぎます。そしてその子にとってその言語は母語となります。一旦母語という存在になると、文法や語彙、表現力が格段に発達し、自然言語として進化していきます。こうなるともはや「簡易言語」とは言えず、ピジンとは区別して「クレオール(creole)」と呼ばれるようになり、これを公用語や共通語にしている国や地域もあります。

ピジン言語は、英語をベースにして発達したものも多くありますが、フランス語、スペイン語、アラビア語、日本語などがベースになっているものなど、世界にはさまざまな例が見られます。

イギリス英語やアメリカ英語といった二大勢力の英語ではなく、ピジン起源の「英語」が使われている地域は、アフリカやアジアに多くあります。例を挙げると、ウガンダ、カメルーン、ザンビア、ジンバブエ、シエラレオーネ、バングラデシュ、パキスタンなどの国で聞かれる口語英語がこの部類に属しています。かつてイギリスの植民地だったとはいえ、インドやフィリピンのようにある程度しっかりした英語が根付いた国もあれば、そうはならなかった国もあるのが現実です。

これらの地域では、「いい生活を送るための近道は、正しい英語(ピジン起源ではない)を学ぶことだ。英語さえできれば仕事にありつけ収入が得られる」という考え方が広まっているといわれています。

ところで、英語は人類史上初の「世界言語」という存在になったわけですが、ここまで普及したのは英語が簡単だからということではなく、ましてや他の言語よりも優れているとか、深い表現力があるからとかいうことでも決してありません。その他の全ての言語と同じく、英語も言語としては至って中立的です。今のように英語の地位が押し上げられているのは、その使用者たちの力や意向によるものにすぎません。人々の文化的、社会的、経済的、政治的な必要性という、すべて非言語的な要因が元になっています。

英語が決して簡単ではないという例として、外国語として英語を学ぶ場合に苦労させられる例を見てみましょう。

・慣用表現が多い
- put up with (我慢する)
- get on with  (<中断したことを>続ける)
- run into (偶然出会う)
- run out of (使い果たす)
- right away (すぐに)
- so on and so forth (などなど)

・他の言語にはあまりないものがある
- thの発音
(What's this? や The theater on the fourth street のような表現をネイティブのように言えますか?)
- rの発音
(bird, early, nurseの母音をネイティブのように言えますか?)
- shの発音のために実際はいろいろな綴りがある
(shoe, sugar, issue, mansion, mission, nation, suspicion, ocean, conscious, chaperon, schist, fuchsia, pshaw, ...)

第六回: 英語にもある強みと弱み

筆者は学生時代に、英語の綴りと発音がいかに一致していないかを揶揄する下記のポエム(作者不明)に出会ったことがあるのですが、皆さんの中に読んだことのある方はいらっしゃるでしょうか。

I take it you already know
Of tough and bough and cough and dough?
Others may stumble, but not you
On hiccough, thorough, laugh and through?
Well done! And now you wish perhaps
To learn of less familiar traps?

Beware of heard, a dreadful word
That looks like beard and sounds like bird;
And dead: it's said like bed, not bead --
For goodness sake don't call it 'deed'.
Watch out for meat and great and threat.
They rhyme with suite and straight and debt.

A moth is not a 'moth' in mother,
Nor both in bother, broth in brother,
And here is not a match for there
Nor dear and fear for bear and pear,
And then there's dose and rose and lose --
Just look them up -- and goose and choose.

And cord and work and card and ward,
And font and front and word and sword,
And do and go and thwart and cart --
Come come, I've hardly made a start!
A dreadful language? Man alive,
I'd mastered it when I was five!

ちょっとネットで調べてみると、これらを発音記号にしたものや You Tube で実際に読んでいるアメリカ人やイギリス人をはじめとするネイティブなど、筆者が学生時代には出会わなかった情報ソースにたやすくアクセスできるようになっていました。ちなみにYou Tube には英語の綴りと発音の不一致を題材にしたこのようなポエムがたくさん上がっており、ネイティブが読み上げるものを聞くことで実際の発音と綴り(字幕で見られます)が確認できます。興味のある方はぜひご覧いただくとよいと思います。

さて一方で、英語にはむしろ強みといえる側面があるのも事実です。

一つ目は、他のヨーロッパ諸言語と異なり、名詞に文法的な性別(男性、女性、中性)がないこと。そのため、名詞の性別によって、冠詞(a, the)や修飾語の語形が変わるという複雑さもありません。

名詞の性は厄介で、例えばフランス語で「月」は文法的に女性(la lune)、「太陽」は男性(le soleil)で、それがなぜかを説明できる明快な理由はありません。一方、ドイツ語では「月」は男性(der Mond)、「太陽」は女性(die Sonne)、「子供」「少女」「女性」はすべて中性(das Kind, das Mädchen, das Weib)になっていますが、なぜかが説明ができません。英語ではこのようなことはありません。

二つ目として、英語は文法がシンプルなために柔軟性を持たせやすく、名詞や形容詞の語尾変化は非常に単純という点が挙げられるでしょう。柔軟性という特性は品詞というカテゴリーにも当てはまり、名詞を動詞として使ったり、動詞を名詞として使ったりと、欧州系の他の言語ではまずできないことができます。

- We can bus children to school and school them in English.(子供たちを学校にバスで通わせ英語で教育を受けさせられます。)
- I have to foot it over to the drugstore for some medicine.(薬を買いに薬局へ行かなければなりません。)
- This is my second visit to Osaka during my stay in Japan.(日本滞在中、今回大阪へ来たのは2回目です。)

三つ目としては、英語は約8割の語彙が他の言語からきているので、語彙が極めて豊富ということが挙げられるでしょう。

そもそも英語という言語は、5世紀にヨーロッパのさまざまな民族が現在のイギリスに流入し、彼らの言葉が混ざって簡略化されていく中から生まれた言語です。つまり、英語も元をたどればピジン→クレオールという発展の仕方をした言語なのです。イギリス土着の言語というわけでもありません(土着言語はケルト語)。また、ラテン語やフランス語のように地位の高い少数派の間で使われていた言語とは対照的に、大衆の間からボトムアップで広まったと見ることもできます。そのため、言葉のルーツをたどっていくといろいろな民族にたどり着きます(ケルト系、ドイツ系、スカンジナビア系、オランダ系、ラテン系など)。今でも、ヨーロッパの諸言語(ドイツ語、イーディッシュ語、オランダ語、フレミッシュ語、デンマーク語、スウェーデン語、フランス語、イタリア語、ポルトガル語、スペイン語など)と同じ語形の語彙が認められます。ヨーロッパ以外でも、借用語の出身言語は、ヘブライ語、アラビア語、ヒンディー語、ベンガル語、マレー語、中国語、タヒチ語、ポリネシア諸言語、アフリカ諸語、ブラジルの少数民族の言語など、数え始めるときりがありません。使用地域の広さと、それらの地域から吸収した語彙や表現の量は、他の言語ではまず見られないものです。

このように英語は、英米圏を完全に離れ、インド化やアフリカ化などが絶え間なく進んでおり、文化的な側面からもここまで多様性を取り込んでいる言語は史上まれにみるものです。この先100年後、200年後の英語の姿がどうなっているか、予想もつきませんね。

担当:翻訳事業部 伊藤

LIST OF CONTENTS

funNOTE更新情報

2025.01.22
funNOTE(Web版)2025新春号を公開しました。
2024.07.09
funNOTE(Web版)2024年夏号を公開しました。
2024.01.19
funNOTE(Web版)2024年新春号を公開しました。

funNOTE

ニュースレターのご案内

アークコミュニケーションズでは、Web制作・翻訳などの旬な話題から、スタッフ紹介まで「アークコミュニケーションズの今」をfunNOTEという形で、年2回(夏・冬)皆さまにお届けしています。

本サイト(www.arc-c.jp)は、快適にご利用いただくためにクッキー(Cookie)を使用しております。
Cookieの使用に同意いただける場合は「同意する」ボタンを押してください。
なお本サイトのCookie使用については、「プライバシーポリシー」をご覧ください。