英語の豆知識 第六回: 英語にもある強みと弱み
皆さんは「ピジン言語」という言葉を聞いたことがありますか。
ピジン言語とは、言葉が通じない二つ以上のグループ間で意思疎通を図ろうとする中から生まれた簡易的なコミュニケーション手段です。お互いの言語を混ぜながら、あるいはいずれかの言語の文法や語彙を簡略化して意思を通じさせる方法です。
商人たちが言葉の通じない国と海外貿易する場合や、戦乱から逃れた異なる民族同士がコミュニケーションを図ろうとする場合、また植民地化された国の人が宗主国の人と意思疎通を図る場合などに発達したといわれています。お互い母語が異なるので、発音は話者の母語の影響を強く受けています。
ピジン言語は、共通言語がない中でコミュニケーションをとることが急務な状況下で、人々が工夫をしながら自然発生的に作り上げてきた簡易的言語です。そのため誰かがそれを母語として使用しているということはなく、自然言語に比べて「ブロークン(broken)」な形態なため、卑下した目で見られがちです。それでも、誤解のないコミュニケーションを図るためには、ピジンなりの語彙や文法ルールを習得する必要があります。
ピジン言語を話す親から生まれた子供は、親からピジン言語を受け継ぎます。そしてその子にとってその言語は母語となります。一旦母語という存在になると、文法や語彙、表現力が格段に発達し、自然言語として進化していきます。こうなるともはや「簡易言語」とは言えず、ピジンとは区別して「クレオール(creole)」と呼ばれるようになり、これを公用語や共通語にしている国や地域もあります。
ピジン言語は、英語をベースにして発達したものも多くありますが、フランス語、スペイン語、アラビア語、日本語などがベースになっているものなど、世界にはさまざまな例が見られます。
イギリス英語やアメリカ英語といった二大勢力の英語ではなく、ピジン起源の「英語」が使われている地域は、アフリカやアジアに多くあります。例を挙げると、ウガンダ、カメルーン、ザンビア、ジンバブエ、シエラレオーネ、バングラデシュ、パキスタンなどの国で聞かれる口語英語がこの部類に属しています。かつてイギリスの植民地だったとはいえ、インドやフィリピンのようにある程度しっかりした英語が根付いた国もあれば、そうはならなかった国もあるのが現実です。
これらの地域では、「いい生活を送るための近道は、正しい英語(ピジン起源ではない)を学ぶことだ。英語さえできれば仕事にありつけ収入が得られる」という考え方が広まっているといわれています。
ところで、英語は人類史上初の「世界言語」という存在になったわけですが、ここまで普及したのは英語が簡単だからということではなく、ましてや他の言語よりも優れているとか、深い表現力があるからとかいうことでも決してありません。その他の全ての言語と同じく、英語も言語としては至って中立的です。今のように英語の地位が押し上げられているのは、その使用者たちの力や意向によるものにすぎません。人々の文化的、社会的、経済的、政治的な必要性という、すべて非言語的な要因が元になっています。
英語が決して簡単ではないという例として、外国語として英語を学ぶ場合に苦労させられる例を見てみましょう。
・慣用表現が多い
- put up with (我慢する)
- get on with (<中断したことを>続ける)
- run into (偶然出会う)
- run out of (使い果たす)
- right away (すぐに)
- so on and so forth (などなど)
・他の言語にはあまりないものがある
- thの発音
(What's this? や The theater on the fourth street のような表現をネイティブのように言えますか?)
- rの発音
(bird, early, nurseの母音をネイティブのように言えますか?)
- shの発音のために実際はいろいろな綴りがある
(shoe, sugar, issue, mansion, mission, nation, suspicion, ocean, conscious, chaperon, schist, fuchsia, pshaw, ...)
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