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中国語の豆知識 最終回: 中国語の語順について
中国語を勉強する時、英語を話せる人は語順が同じだから覚えやすい、という話を時々聞くことがあります。果たして本当に中国語と英語は似ているのでしょうか?中国語コラム最終回は、中国語と英語という2つの言語に注目してみます。
【中国語の語順は英語と似ている?】
中国語の語順がいわゆるSVO(主語+動詞+目的語)になっているという事を知っている人は少なからずいるようです。それを根拠に「中国語は英語の語順と同じだから覚えやすい!(^^)v」という話も出たりします。
今回は、確かにそうだと言える例と、必ずしもそうとは言えないという例をご紹介してみたいと思います。
【中国語と英語が似ているといえる例】他 看 书。
tā kàn shū
He reads a book.
彼は本を読みます。中国語は語形変化がないのでそれぞれの単語やフレーズの役割が語順で決まります。上記の簡単な例では、動詞(看 kàn (読む))を中心にしてその前後に現れる名詞(句)が、その位置関係によって、それぞれ主語(S、「~は」の意味)と目的語(O、「~を」の意味)の役割を担わされています。このような短くて単純な例だけを見ると、確かに「英語と同じですね」という結論に行ってしまいそうですが、少し複雑なセンテンスになると、そうではない例もたくさん見つかります。
【中国語と英語の語順が異なる例】我 把问题 解决了。 (「把~」=「~を」)
wǒ bǎwèntí jiějuéle.
[I][problem][solved]
I solved the problem.
わたしは問題を解決した。この例をみると、SOVの語順で並んでおり、むしろ日本語の語順に似ています。
下記の例も同じです。你 怎么 把钱包 弄丢的? (「弄丢」=「なくしてしまう」、「的」=「のですか」)
nǐ zěnme bǎ qiánbāo nòngdiu de
[You][how come][wallet][lost]
How come did you lose your wallet?
どうして財布をなくしてしまったのですか?SVO, SOVのような「動詞を基軸とした構造」の他に、「名詞を基軸とした構造」についても少し目を向けてみましょう。例えば、
前往 旧金山的 CA985次航班,现已 开始 登机。
qiánwǎng jiùjīnshānde CAjiŭ bā wŭ cì hángbān, xiànyǐ kāishǐ dēngjī
[Going toward][San Francisco][Flight CA985], [now already][started][boarding]Flight CA985 for San Francisco is now ready for boarding.
サンフランシスコ行きのCA985便は今から搭乗を開始いたします。この中国文例のカンマより前(前往 旧金山的 CA985次航班)の部分を見ると「CA985便」にあたる「CA985次航班」が中国語では最後、英語では最初(Flight CA985)に現れています。名詞句の中心(被修飾語、Head)がフレーズの最後にくる点は、英語よりもむしろ日本語に近い例です。
【似ているとも、似てないとも言えない例】
またこんな例もあります。
下記の例を見ると、中国語は英語と日本語の中間的な語順に思えます。你 要 在哪里 跟谁 吃 晚饭 呢? (「跟~」=「~と」、「吃」=「食べる」)
nǐ yào zài nǎlǐ gēn shéi chī wǎnfàn ne
[You][will][where][with who][eat][dinner]?
Where and with who will you have dinner?
あなたはどこでだれと夕食を食べるのですか?これは疑問文なので、英語の場合疑問詞が無条件で文頭に出てしまいますが、例えばこれを平叙文にして、
我 要 在四川餐馆 跟我的朋友 一起 吃 晚饭。(「一起」=「一緒に」)
wŏ yào zài sìchuāncānguǎn gēn wŏ de péngyŏu yīqǐ chī wǎnfàn
[I][will][at Sichuan restaurant][with my friend][together][eat dinner]
I will have dinner with my friend at Sichuan restaurant.
私は四川料理のレストランで友達と一緒に夕食を食べます。この様にしてみると、動詞句の「吃晚饭(eat dinner)」の部分はVOの語順になっていますが、この動詞句が文末に来て、その前に「在四川餐馆(四川料理のレストランで)」と「跟我的朋友一起(友達と一緒に)」が来るというのは、英語と大きく異なる点です。
ただし「在」「跟」と「四川餐馆」「我的朋友」の位置関係が、「at」「with」と「Sichuan restaurant」「my friend」の位置関係と同じようになっている点は中国語と英語の語順が、少なくともフレーズレベルでは似ていると言えます。(日本語では「で」「と」の<前>に「四川料理のレストラン」「友達」が現れます。)【さいごに】
「言語の起源」という話題は、言語学ではタブー視されることがあります。日本語や韓国語は起源や周辺言語との関係性が不明とさえ言われることもあります。が、言語の歴史については興味深い様々な研究が多くあります。
今回は少し難しい内容になりましたが、中国語と英語にフォーカスを当ててみました。この両言語は影響力が大きい2大言語で、その成り立ちは周辺異言語の影響を強く受け、様々な要素が混じりあった結果、今のような形になっています。また両言語とも語群も語族も異なっており、「似ている点がある」とすれば、それは「偶然の一致」と言ってもいいかもしれません。
さて、これまで9回にわたって連載した中国語のコラムは今回でとりあえず最終回です。興味をもって最後まで読んでくださり感謝いたします。次回からは、英語についてのコラムが始まる予定です。どうぞお楽しみに。担当:翻訳事業部 伊藤
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