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中国語の豆知識 第1回:中国語の多様性
「中国に行っても、漢字がわかるから何とかなるよね」などと思うことはありませんか?「漢字」や「漢文」を習う私たち日本人は、中国語についても何となく知っているつもりになっていますが、実は知らないことがたくさんあるのです。そこで、今回から知っているとちょっと役に立つ、そんな中国語についての連載開始です。
話し言葉は多種多様
中国の広大な国土は、13億人という世界最大の人口を擁しています。更に、中国本国に留まらず、海外に散らばっている「華僑」と呼ばれる人達も、中国人。
そんな彼らの話し言葉はまさに多様で、中国人同士でもコミュニケーションが成立しないほど、様々な種類に分かれています(標準語*1、上海語、福建語、広東語、客家語、潮州語、etc)。
ちょっとイメージが沸かない人は、ヨーロッパでのスペイン語やフランス語、イタリア語などのようにその差は大きいと考えてみて下さい。
ただし中国というひとつの国で使われているこれらの「異形」を、「異言語」と捉えるか「方言」と捉えるかについては、言語学者や政治家などの間でも、それぞれの立場や利害で主張が分かれているようです。一方で書き言葉は
さて、書き言葉についてはどうなっているのでしょう。
中国語は、みなさんご存知の通り、すべて漢字で表記されます。でも、そんなにたくさんの中国語「方言」があるなら、書き言葉もたくさんあるのでしょうか?
確かに、これらの「方言」を文字(方言用の漢字)で書き表すことも可能です。しかし実際の書き言葉は、標準中国語の漢字表記(中国人学校教育を通して習う中国語)だけで、事が足りてしまうのです。わたし達が最近都会でよく目にする中国語の駅名表記も、これにあたります。話し言葉は様々でも、書き言葉はひとつ*2
そういえば昔のヨーロッパでは、各国の話し言葉は異なっていても、文章を書く時は皆、ラテン語を使っていた時代があったのですが、強いて言えば中国語もこの状況に似ていると言えるのかもしれません。<つづく>
*1 「標準語」は、「普通話」「マンダリン」とも呼ばれます。ちなみに「北京語」とは、正確には北京地区で通用している口語のことを指します。 *2 簡体字・繁体字との分類がありますが、これについての話は長くなりますので、またいずれ。 担当:翻訳事業部 伊藤