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アジアでナンバーワンのビジネススクールを目指して - グロービス経営大学院
近年はグローバル人材という言葉が一般化し、企業のみならず大学などの教育機関でも“グローバルリーダー育成”を謳うようになりました。
今回ゲストにお招きしたグロービス経営大学院は、他よりずっと早い1992年の開校以来、アジアでナンバーワンのビジネススクールを目標にグローバル人材を育てることに注力しています。そのグロービスが昨年、いよいよ英語だけのMBA全日制フルタイムプログラムを開始しました。
本格的なグローバル化を視野に入れて加速するグロービスは、何を見つめているのか。中村知哉様、田岡恵様にお話をうかがいました。
【プロフィール】[敬称略]中村 知哉
グロービス経営大学院 経営研究科研究科長 MBAプログラム(英語)
一橋大学社会学部卒。ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。丸紅株式会社入社、アドバンテッジパートナーズの投資関連業務で倒産会社富士機工電子の再建などに携わる。
田岡 恵
グロービス経営大学院 英語MBAプログラム ファカルティ・コンテンツ オフィス マネージャー
慶応義塾大学文学部哲学科卒業、筑波大学大学院ビジネス科学研究科国際経営プロフェッショナル修了(MBA)。ロンドン、ニューヨークにて、アパレル、エンターテイメント・ライセンシング業界の会計業務に従事。大里 真理子
株式会社アークコミュニケーションズ代表取締役
佐藤 佳弘株式会社アークコミュニケーションズWeb事業部長左から 中村氏 大里 田岡氏 佐藤開校以来のターゲットだった
英語全日制プログラム大里:グロービス経営大学院は、昨年、英語の全日制フルタイムプログラムを開設しました。ついに本格的なグローバル化に乗り出したという印象ですが、ここに至る経緯を教えてください。
中村氏:私たちは、「アジアで一番のビジネススクール」を目標としてきました。その目標を達成するために英語でのプログラムが必須であることは、開校以来、認識してきたことです。日本語だけでは日本国内で終わってしまいますからね。そこで、06年にアラカルトでの英語クラスを開始し、09年に平日夜間の英語パートタイムMBAプログラムを開設、そして12年に英語フルタイムMBAプログラムと段階を追って拡大してきました。英語MBAフルタイムプログラム開設に当たり、36社の大企業やマルチナショナルカンパニーとグローバル人材育成に関する協力関係も構築してきました。
大里:グロービスさん自体のグローバル化ともとれる展開ですね。学生さんたちの国籍もバラエティに富んでいらっしゃるとか。実際にはどんな国の学生さんたちを対象に考えているのですか?
中村氏:初年度の23名はインドネシア、マレーシア、フィリピン、タイなどアジア圏を中心に幅広い国の方に参加していただきました。アメリカの学校ではアメリカのビジネスしか教えてくれない。将来、日本やアジアのマーケットで活躍するためには、アジアである日本でMBAを取るのが一番、と我々の特長を強調しています。
田岡氏:実際に現地に行くと、日本に対する信頼感・期待感が、日本で想像するよりずっと大きいことを実感します。グロービスは、日本で一番のビジネススクールである、日本のトップ企業の経営者が講師陣に名を連ねている、スタッフが温かい、対応が速い、などいろいろな面で好印象を持っていただきました。なかには講師が直接会いに来てくれたのか、と驚く方もいました。営業が派遣されるだけの学校がほとんどなんですね。日本のブランドパワーは依然として強い。日本の企業が長年にわたってグローバルマーケットで上位にランクされている秘密を学びたいと、学生たちの目が輝いています。そこには経営戦略のほかに規律を守る精神力などの文化的背景も貢献していると強く感じました。
中村氏:学生のリクルートには、堀(堀義人氏:グロービス代表)も現地に足を運んでセミナーを行いました。グロービスで学べば、堀のような起業家になれるかもしれないと、将来の夢を現実的に体感してくれたようです。
佐藤:彼らにしてみれば、日本に来て学ぶことが重要なのですね。日本で成功している企業の力を生で感じたいという気持ちは、こうやってお聞きするとよく理解できます。営業的にはこちらから出ていった方が親切、学生も集まりやすいと発想しがちですけどね。
中村氏:その通りです。グローバル化というと、日本ではなく、現地たとえばアジアならシンガポールなどに開校した方が有利と考える人もいます。ところが、学生さんたちにとっては、日本の環境の中で勉強ができることに大きな魅力を感じるのです。したがって、グロービスの教育サービスという点では、日本で教育をうけることの魅力を前面に出しています。日本独自の精神性、ビジネスを通じての社会貢献など、講義以外にも多くを学べると評価していただいています。
田岡氏:アジアでは女性の意識が高いことも強調したい点です。グロービスのインターナショナルは40%が女性です。欧米のビジネススクールでも30%程度ですから、これは注目に値します。日本でも優秀な女性は外資系に就職する率が高いと言われていますが、10年後、20年後にはさらに女性のグローバル進出が本格的になると期待されます。タイでは、すでにマネージャーの6割が女性だそうです。私たちもワークショップなどを開いて、積極的にアジアの女性たちをリクルートしたいと考えています。
中村氏: 本当に女性はたくましいです(笑)
プログラムの品質を左右する
クリエイティブな英訳大里:今後、多くの学生さんに世界中から来ていただくためには、英語プログラムの品質管理がとても重要かと思います。この点はどのような対応をしていらっしゃいますか?
中村氏:私どもは、「学生の高満足」「100%実務経験を持つ講師陣」「創造と変革」「志(こころざし)」に特徴があります。高満足とは学生さんたちの満足度です。プログラムに満足できなかった学生さんに返金するサービス保証制度があるのはグロービスだけです。それほどにプログラムの品質には気を使っています。学生さんたちには講師の評価もしてもらいます。実務経験がしっかりとあり、教えることに情熱を持てる方でないと、講師には採用されません。創造と変革とは、ゼロから事業を起こしたり、大企業を変革したりすることです。志とは、一人一人の学生の生きる目標を見いだすことです。
佐藤:特に日本の良さを伝えることをメリットにしたいということであれば、ユニークさ、特殊性をアピールすることも重要になると思います。その意味で教材のクオリティも同様に問われると思います。英語の教材制作はどのようなことに一番、気を使っていらっしゃいますか?
田岡氏:日本のケース(企業事例)を扱うことにこだわっています。日本企業が現地に行って苦労したケースを取り上げるなど、日本の学校ならではの特長を打ち出しています。それこそが日本で学ぶことを意識しているポイントです。この中には、日本やアジア独特の考え方などがあり、これを理解してもらうために、英語の品質はとても重要であり、神経を使っています。日本人の学生に英語プログラムを提供しているときはグラマーがしっかりしていれば通用しました。しかし、いろいろな国の方に品質の高いプログラムを提供するためには、よりナチュラルで相手に訴える英語が必要になりました。言い換えれば、論理構成のしっかりしたクリエイティブな英語が求められるようになったのです。アークさんにも翻訳では、ご協力をいただいていますね。ありがとうございます。
大里:はい。従来より和訳のお手伝いをさせていただいておりましたが、英訳もお手伝いさせていただくようになりました。お役に立てて光栄です。
日本人にも海外からの学生さんにも
日本で学ぶことの意義を伝えたい佐藤:先ほど、アジアの若い人たちが日本に来て積極的に学ぼうとする姿勢についてうかがいました。これから伸びていこうとする国の活力を痛感するお話でした。では、グロービスさんとして、日本の若い人たちに対してのグローバル教育はどのように考えていらっしゃいますか。今後、日本人のグローバルリーダーを育てることも御社の使命かと思います。
中村氏:たしかに日本人の教育は大きな課題です。日本語のMBAプログラムを選択している学生さんも、3分の1は英語プログラムを取ることができる制度を採用しています。ただし、英語力の審査はあります。
田岡氏:グローバルで通用するには、言語能力に加えて論理構成力が要求されると思います。いろいろな国の方とお話をしていると、話す順序やアピールの仕方がさまざまなんですよね。グロービスでも、クリティカル・シンキングというプログラムが人気なのですが、その力がまさにグローバル社会での理解力そのものだと思います。
中村氏:グロービスでは、グローバルリーダーに求められる能力を6つ挙げています。「ビジネススキル」「コンセプチュアルスキル」「ヒューマンスキル」「英語力」「グローバルパースペクティブ」「異文化対応力」の6つです。前半の3つは、国内・グローバルに問わず、リーダーに求められる能力です。後半の3つは、グローバルで活躍するに当たって求められる能力です。
佐藤:日本の学生がアメリカに留学することには大きな意味があると思いますが、今回お話を伺った全日制の英語MBAプログラムで学ぶということも大いに視野に入れてほしいですね。特に、社会に出たあとでもう一度学びたいという意欲のある人にとって、このプログラムは魅力的でしょう。
中村氏:まったくその通りです。堀も私もハーバードで学びました。大里さんはケロッグでしたね。どちらも素晴らしい学校です。しかし、時代は変わりました。家庭の事情や卒業後の環境、時間などを考慮すれば、日本でMBAを取得することのメリットをもっと評価していただきたいですね。将来的には、英語プログラムにも20~30%の日本人に参加していただきたいと思います。
大里:お話の通り、私はケロッグでMBAを取りましたが、在学中、アメリカでのビジネスばかり教えられて、日本で役に立つのかと不安に感じたこともありました。実際に日本や中国で仕事をした際になかなかビジネススクールで学んだことを活かせない、と感じたこともあります。卒業後に活躍する環境に近い日本で学べるのは、アジアの人にとっても日本人にとっても、非常に恵まれたことだと思います。グロービスさんには、もっとその良さをアピールして、ご活躍いただきたいです。
中村氏:今、海外からの学生さんたちと一緒に陽明学を勉強していますが、英訳するのがとても難しくて楽しい(笑)! 中国語、日本語、英語を交えて格闘することが学生たちの興味を喚起しています。
田岡氏:4つの特徴の中に挙げた「志」も東洋的な考え方であり、とても新鮮に映るようです。「いつか達成したい目標を持つ」「どんな人間になりたいか考える」など、ビジネスの枠を超えた日本的な心を学ぶ喜びをもっと伝えていきたいと思います。
大里:お話を伺っていて、日本流の良き経営メソッドをグローバルで通用させるための熱意、そしてグロービスさんがお持ちのグローバル人材育成のノウハウに、勇気と希望をいただきました。アジアを舞台にしたグローバルリーダー育成に期待させていただきます。今日は楽しいお話をありがとうございました。
グロービス経営大学院様からのプレゼント
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バックナンバー
- アジアでナンバーワンのビジネススクールを目指して - グロービス経営大学院(2013年夏号)
- ビジネス書翻訳のプロフェッショナルに聞く[英語版](2012年冬号)
- アビタスが次に考える、グローバル人材[英語版](2012年夏号)
- シックス・アパートが展開するプラットフォームビジネスを聞く[英語版](2011年冬号)
- グローバル企業のインナーコミュニケーション戦略[英語版](2011年夏号)
- 外国語サイト制作/Webサイト翻訳[英語版](2011年春号)
- グローバルサイト/多言語サイト・ソリューション[英語版](2010年冬号)
- グローバルサイトで市場開拓[英語版](2010年夏号)