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アビタスが次に考える、グローバル人材
英語を社内公用語とする会社が現れるなど、グローバル人材の重要性はさらに高まっています。17年前に米国公認会計士資格講座を開設し業界をリードしてきたアビタスは、グローバル人材育成のパイオニアといえます。
アークコミュニケーションズ代表・大里真理子がゲストを迎えてお話を伺う対談シリーズ、今回のお客様は株式会社アビタス代表・三輪豊明様です。ほぼ同時期に独立・起業した大里と三輪様は、旧知の仲。今まであまり語られることのなかったアビタス成功のビハインド・ザ・シーンに、ずばりと迫ります。
アメリカの資格を日本で売ろうとしたきっかけは? 新たに経営に乗り出した日本語学校の目的は? 今後求められるグローバル人材とは?
楽しい話になりそうです。自分で会計士になろうと思ったのが
起業のきっかけ大里:グローバル人材の重要性が取り上げられるようになりました。グローバル人材という言葉には、「英語だけではない、さらにプラスアルファの強み」であると、三輪さんは、早くからその点に注目したビジネスを始めました。
三輪:はい、アビタスの主力は、米国公認会計士(U.S.CPA)資格を取るための講座ですが、これは1995年にスタートしました。語学力+専門知識・専門資格を身につけたいという20代後半から30代半ばの方に支持されてきました。その後、米国弁護士コース、米国MBAプログラムを順次、立ち上げました。日本にいながら、アメリカの資格がとれるという意味では同じコンセプトのサービスです。
大里:それにしても、なぜアメリカの公認会計士資格を取る講座を思いついたのですか?
三輪:それまで勤めていた会社を辞めたときに、何をしようかな、と悩んでいるうちに、米国公認会計士の資格を取ることを思いついたんです。ところが、いざ調べてみると、日本で受講できるいいコースがない。そこで、これはビジネスになるのではないか、と考えたわけです。
大里:自分で会計士になろうとしたということですか?
三輪:はい、そうです。実際に資格は取りました。でも、講座開設に乗り出してしまったので、会計士にはなりませんでした(笑)。
日本語学校の経営、
アビタスの中国進出への布石大里:今年から「東京中央日本語学院」という日本語学校の経営を始められました。これはどういう経緯だったのですか?
三輪:正直言って、アメリカの主要資格はやり尽くしたと感じていました。しかし、経営者として立ち止まるわけにはいきません。そこで今度は、日本のものを海外の人に提供しよう、と考えたのが日本語学校でした。意外かもしれませんが中国や台湾では、日系企業や日本とのビジネスを行える人材に対する需要は非常に高く、英語を話せる人よりも、日本語を話せる人の賃金の方が高いという話も聞きます。数の多い米国留学組より少数派の日本留学組のほうが市場価値が高くなっているように感じています。
大里:生徒さんは中国からの方が多いのですか?
三輪:現在、31ヶ国から学生を受け入れていますが、6割が中国人です。次に多いのが台湾。中国、台湾での日本語学習者はものすごい人数です。ベースとなる人口が多いですから、とても大きな数字になるんです。欧米の学生もいますが、やはり主体はアジアの国ですね。
大里:ヨーロッパの経済も明るいニュースが少ないですし、アジアがさらにクローズアップされている感じですね。
三輪:その通りです。一昔前は、アメリカ出張、ヨーロッパ出張が多かったと思いますが、最近はアジアですよね。上海、大連あたりは国内出張ぐらいの感覚でしょう。中国のほかにも、台湾、ベトナム、タイ、シンガポール、フィリピン、どの国も魅力的です。でも、実は日本語学校を始めたのには、もうひとつ大きな理由があります。アビタスが専門としているアメリカの資格講座を中国で売るための準備なのです。中国にこのマーケットが存在することは確信しています。しかし「なぜ日本の会社であるアビタスがアメリカの資格を中国で売るのか、そこに付加価値はあるのか」という根拠が今は乏しい。そこで、アジアの学生を受け入れる日本語学校を開いて、アジアの教育機関とのパイプ作りからスタートしようと考えているのです。
大里:なるほど、これからの展開が楽しみですね。三輪さん自らマーケット開拓に出かけていらっしゃるんですか?
三輪:もちろんです。今は月の半分以上アジアに行っています。中国の大学や専門学校にも行っていますよ。頻繁に行っているので、現地でのコネクションもかなりできてきました。
大里:本当にフットワークが軽いですよね。中国語もだいぶ上達されたでしょうね?
三輪:ええ、実は今年に入ってから、かなり身を入れていまして(笑)。ビジネスの話は英語でいいんですが、例えば現地の人たちと食事に行ったときなど、ちょっと中国語を話すと喜んでくれるんですよね。そういったコミュニケーションが信頼関係を築くこともありますし。
大里:実は、アークコミュニケーションズでも海外の学生を対象にしたビジネスを考えているんですよ。今、早稲田大学や立命館大学を筆頭に、日本の大学も英語だけで学位を取れる制度の導入が進んでいるんです。そうなると、もっと海外からの留学生が増える。その学生たちにサービスを提供するという発想です。
三輪:それは面白いですね。ターゲットはアジア?
大里:はい、やはりアジアでしょう。
三輪:それは、私たちが開拓しようとしている中国の大学生とターゲットがぴったり重なりますね。
大里:今度、三輪さんの中国出張にご一緒してもいいですか(笑)
三輪:どうぞ、どうぞ。楽しい旅になりそうですね(笑)
世界でチャレンジする
グローバル人材に求められること大里:ますます需要が高まる「グローバル人材」ですが、「グローバル人材に求められていること」この点について三輪さんはどう考えられていますか?
三輪:もちろん言葉は大切です。でも、言葉って、発音や文法がパーフェクトでなくても通じればいいじゃない、と思い始めていますね。中国で会った日本人のビジネスマンが面白いことを言っていて「北に出張したときは、いや僕の中国語は南で勉強したから、南に出張したときは、北で勉強したからって、言えばいいんですよ」と(笑)。
大里:自分でも反省しますけど、日本人は完璧主義すぎますよね。綺麗な発音や正しい文法も大切ですが、ビジネスの現場では通じることが目的ですからね。
三輪:そうですね。それから、グローバルに活躍したいと思う人は、20代のうちに何をしておこうか、30代にするべきことは何か、とタイムラインを引いて、考えることが大切だと思います。20代から30代のうちに、語学+専門知識を身につける、という意識は今後さらに一般的になると思います。米国公認会計士以外にも資格やキャリアを身につける方法はたくさんあります。それぞれが志すジャンルで、グローバルな知識を蓄えて力を発揮する時代だと思います。
大里:ベテラン世代のグローバル化については、どうお考えですか?
三輪:40代、50代になると、管理職として外国人をマネージメントできる能力が求められるようになります。特にこれからはアジアの人が部下になることが増えてきます。日本国内でも、もちろんですが、北京や上海に行って、管理職として仕事をしなければいけなくなるかもしれません。それぞれの国には、それぞれの生活習慣や考え方があります。言葉さえ通じれば管理職として通用するかといえば、そうではありません。ジェネラルマネージメント力がグローバル人材として必要とされます。
大里:日本はアジアのリーダーシップを取らなくてはいけませんね。
三輪:そのとおりです。日本は元気がない、と言われますが、どの国もそれぞれ問題を抱えているわけです。総合的に見て日本は決して悪いポジションにいるわけではない。決して悲観する必要はない、と心から思っています。街がきれい、ルールを守る、最先端工場のクリーンさ、技術力、日本製品への信頼感、など誇れる点は多く、これも立派な日本の文化です。自国の良さを理解し意識をした上で、伝えながら、海外でビジネスをするのもグローバル人材の使命です。日本の文化というと、どうしてもお茶やお花など芸術面に目が行きがちですが、ビジネスの分野で世界に伝えたい日本の文化はたくさんあります。もっと自信を持って堂々とチャレンジしたいですね。日本は少子高齢化でマーケットが小さくなる一方、アジアのマーケットが大きくなっている、アジアに出ていかざるを得ないわけですから。
大里:アジアでグローバルに活躍している人というと、シンガポールとか、華僑の人たちの活躍が目立ちますが、これからは日本人のグローバル人材に期待したいですね。日本人でも若い人はものすごくグローバルを意識するようになっています。英語の他にもう一言語を習得しなければ、という意識の高さを、若い世代には感じますね。
三輪:それはいいですね。
大里:あと10年も経てば、多国語を話し、アジア現地で活躍するグローバルなビジネススキルを持つ日本人がたくさん出てくると思います。すごい勢いで変わってきているので、私も置いていかれないように頑張らないと(笑)。
三輪:そうですね。アジアのローカルで認められる人材は、求められているし、間違いなく増えていくと思います。
大里:では、最後の質問です。グローバルで戦う強みは? 三輪さんは、ご自身の強みは何だと分析されていますか?
三輪:何より、好き、ということだと思います。グローバルに成長していく組織を作る、違う文化や、色々な国の人と仕事をする、というのが好きなんでしょうね。もし、アビタスのヘッドクォーターを香港に移すことになったら、これは楽しいでしょうねぇ。ワクワクします。思い返せば、大学生のときに、カリフォルニア大学サンタバーバラ校に1年交換留学していたんですが、そのときの、海外の人たちと一緒に何かをする楽しさ、ワクワク感が忘れられないのかもしれません。
大里:三輪さん、海外にいると本当に楽しそうですものね。海外進出への情熱と、フットワークの軽さは見習うばかりです。今日は、長時間、貴重なお話を本当にありがとうございました。
三輪豊明
株式会社アビタス代表取締役 米国公認会計士
東京都出身。東北大学経済学部卒。1988年大和証券入社。89年ユニデン入社。94年退社後、U.S.エデュケーション・ネットワーク(現アビタス)創立。2012年より東京中央日本語学院、学院長を兼任。 -
バックナンバー
- アビタスが次に考える、グローバル人材(2012年夏号)
- シックス・アパートが展開するプラットフォームビジネスを聞く[英語版](2011年冬号)
- グローバル企業のインナーコミュニケーション戦略[英語版](2011年夏号)
- 外国語サイト制作/Webサイト翻訳[英語版](2011年春号)
- グローバルサイト/多言語サイト・ソリューション[英語版](2010年冬号)
- グローバルサイトで市場開拓[英語版](2010年夏号)